「安価で管理が容易」が受ける

　UTM（統合脅威管理）の市場が今、急速に伸びているようだ。日立システムアンドサービス（中村博行社長）の記者発表で用いられたIDCジャパンのデータによれば、従来のファイアウォール／VPNの市場が徐々に縮小傾向にある一方、UTMのそれは年率26.8％のペースで、急速に成長しているという。

　UTMは複数機能を統合したアプライアンスだけに、運用コストが低く抑えられること、トラブル発生時に対応しやすいことから、大企業はもとより、中小企業などでの導入も進んでいる。

　日立システムアンドサービスが販売するのは、ジュニパーネットワークスのUTM「SSG」シリーズだ。「大企業は、従来のシステムのリプレース時期がきていることから、このタイミングでUTMの導入を進める。一方、中小企業ではまだ導入しているところが少ないので、新規案件として拡販していきたい」（西條洋・ネットワーク・セキュリティソリューション本部長）としている。

　同社では、UTM製品の性能は向上していくものの、価格競争によって機器の価格は下がっていることから、単体での売り上げを見込むより、ソリューションとしての提供や運用保守をセットにすることで、売り上げ規模を拡大させようと考えている。2010年には、UTMとソリューションをセットにした販売で100億円に乗せたいと意気込む。

　住商情報システム（阿部康行社長）では、フォーティネットジャパンと、ジュニパーネットワークスの2製品を取り扱う。

　「確かに06年後半から伸びていて需要もある。予測は難しいが、将来は今の販売量の2－3倍は売れるのではないか」（奈良部朝康・ITプロダクト＆サービス事業部セキュリティプロダクト部営業第3チーム・チームリーダー）と見込む。

　企業、特に製造業には古いPCが数多く残っているような状況もあり得る。「OSが古い場合に最新のパターンがインストールできないケースなども発生する」（川崎達也・ITプロダクト＆サービス事業部セキュリティプロダクト部営業第1チーム・チームリーダー）ことから、情報の出入口に置くことができるUTMの導入が有効だとしている。

　UTM販売での差別化点はサービスだ。「結局、機器は特定メーカーから出る限り、同じもの」（奈良部氏）だからだ。住商情報システムでは、独自のサポートブランドを持ち、提案を行っている。

　「UTMは導入するだけではなく、メンテナンスが必要となってくる」。同社は金融、製造業を中心にライセンス管理などのサポートサービスで、継続的な売り上げを狙う。各販社により、UTMの売り方はさまざまで、保守サービスをつけるベンダーもあれば、「保守サービスを持っていないところはコンサルティングサービスなどを提供する企業もあるだろう」と話す。

　「セキュリティレベルで言えばUTMよりも各機能の専用機のほうが高性能。大企業は専用機を組み合わせるところも多い」と日立システムアンドサービスの西條氏。だが、例えばファイアウォール／VPN、IDSやIPSを組み合わせた場合とUTMを比較すると導入費用、保守費用ともに2倍の差が出るという。

　高い伸長率もうなずける話だ。