中小のIT投資喚起する2つのカギ

　2008年度から09年度まで継続が決まった「情報基盤強化税制」。この延長期間は、過去2年以上に中小企業向けITビジネスを拡大させるチャンスだ。理由は2つ。同税制の「取得価額引き下げ」と「対象データベース（DB）の拡大」だ。

　現状の情報基盤強化税制は、対象製品を一定価額以上購入すれば7％の税額控除か35％の特別償却が認められる制度。税額控除を選んだ場合、簡単にいえば7％引きで商品を購入するのと同じ効果が得られることになる。

　対象製品は（1）OSとサーバー（2）DBとDBの機能を利用するアプリケーション（3）ファイアウォール（FW）の3分野で、OSとDB、FWはすべて情報セキュリティの国際標準規格「ISO／IEC15408」取得が条件になる。取得価額の下限は企業の資本金で分け、1億円以下で300万円、1億円超10億円以下で3000万円、10億円超で1億円。

　延長する2年間では、この内容を一部見直し拡充した。拡充施策の1つに「取得価額引き下げ」が盛り込まれている。中小企業の利用促進を意識し、資本金1億円以下の企業に限り、取得価額の下限を300万円から70万円に大幅に引き下げた。これが需要促進のカギの一つだ。

　経済産業省は過去2年間の効果について「実質のGDP（国内総生産）押し上げ効果は減収額の1.8倍にあたる約3100億円とみており、一定の成果は出せた」と説明する。ただ、「中小企業には、取得価額の下限額300万円は高額で、足かせになった」（石川浩・情報処理振興課課長補佐）とも実感している。同省によれば、04年の日本企業の1社あたりのIT投資額は、00年に比べて全企業で7.8％伸びたが、資本金1億円以下の企業だけでみれば、0.7％増でほぼ横ばいで推移する。中小企業のIT投資額の底上げは、同省の重要なミッション。300万円という金額では中小企業には敷居が高いとみたわけだ。300万円以上購入しなければ優遇措置を受けられなかったのが、バーが70万円に下がれば当然中小企業は使いやすくなる。

　もう1つのカギとなるのが「対象DBの拡大」。実は取得価額と同じレベルで、中小企業にとっては利用の足かせになる要素が潜んでいたのだ。というのは、主力DBメーカーは大企業向け製品は「ISO／IEC15408」を取得済みだが、中小企業モデルではまだ未対応。中小向けDBでシェアが高いマイクロソフトと日本オラクルも同様だ。業務アプリケーションはDBとセットで購入することが同税制の条件。大半のユーザーは業務アプリ導入のためにITに投資するわけで、中小向けDBが対象外では話にならない。

　マイクロソフトと日本オラクルは、ともに中小向けモデルで認証取得に向け作業に入っており、取得が間近。「春には取得できるだろう」（日本オラクル幹部）との見通しもある。

　2つの要素が加わり、情報基盤強化税制は、過去2年以上に使いやすくなる。ITベンダーにとっては中小企業のIT投資を喚起させる格好の起爆剤になる。「この2年延長がIT関連の優遇税制として最後かもしれない。10年度以降の継続はかなり厳しい」（経産省関係者）との見方がある。それだけに、この優遇措置をうまく使わない手はない。