2007年には矢継ぎ早にISVやSIer向けのパートナー支援プログラムを打ち出したLinuxディストリビュータ最大手のレッドハット（廣川裕司社長）。約75％の市場シェアを誇るトップベンダーではあるが、パートナー向け施策をみると、以前は支援制度を体系立てて展開しておらず、他のITベンダーよりも取り組みが鈍かった。この状況を変えたのが、1年前に入社した元サン・マイクロシステムズの纐纈昌嗣・マーケティングパートナービジネス統括本部長だ。パートナー向け施策の成果と、今後の展開を同氏に聞いた。

　パートナー向け施策の進捗は？

　「道半ばだ。私が入社する前は、ISVやSIer、ITサービスベンダーなどレッドハットの製品・サービスを使って事業展開するパートナーに対して、情報を伝えるインフラができていなかった。そのため、入社後すぐに、パートナーのビジネスを支援できるプログラムをパートナーの業種と企業規模ごとに個別に整備した。各パートナーそれぞれの細かなニーズになるべく応えられるようにしたわけだ。効果は出ているが、まだまだ浸透度が低い。今年は、昨年つくったパートナー制度を大々的に増強したり、大幅に変更したりはしない。現状の基盤をさらに強固にして、認知度向上を図ることを最優先する」

　効果が出ているとは具体的に何か。

　「たとえば、伊藤忠テクノソリューションズ（CTC）との協業だ。技術・ビジネス情報の提供を積極化したことで、CTCの技術者育成が急速に進んでいる」

　パートーナー制度の浸透以外に力を注ぐことは？

　「保守サポート契約の更新比率を大幅に引き上げたい。現状では、ユーザーが保守サポート期限が切れていることを知らないケースが結構ある。ユーザーは保守サポート費用を支払うことに対して、それほど違和感を感じていない印象がある。しっかりと営業活動を展開すれば、更新比率は上げられるはず。現状の更新比率に約30ポイント上乗せしたい」

　レッドハットのシェアは約75％と圧倒的だ。ビジネス拡大に必要なマーケティング施策は何か。

　「同業ベンダーに勝つために何が必要かとか、シェアをさらに伸ばすにはどうすればよいかではない。マーケットを広げるために何が必要かだ。OSSか商用ソフトかを気にして使うユーザーはほとんどいない時代になったと思う。それだけにユーザーとベンダーのOSS、Linuxに対する不透明な点の解消と利点をもっと伝えれば、必ず市場は広がる」

　今年1月には米本社のCEOが代わり、2月には日本法人の社長が藤田佑治氏から廣川裕司氏に変わった。

　「新体制で何か変わるのかと問われると、現状ではなんとも言えないが、パートナー施策の充実・浸透を図る戦略は変わらない。廣川社長とはサン時代も仕事した経験があるし、互いに考えている方向性は共通している。今後の具体的な施策について議論を進めている」