ITとNWの両方を持つ強みを

　2月20日、NECは経営説明会を開催し、NGN（次世代ネットワーク網）を中心とした成長戦略に集中すると発表した。矢野薫社長体制となってから、これまでも同社はNGN関連ビジネスを核に据えることを打ち出してきたわけだが、なぜそこまでNGNにこだわるのだろうか。

　矢野社長は、「この1週間、3つの重要な提携を発表した。このような取り組みを踏まえ、当社がどこに進もうとしているのかを伝える」としている。実際、2月12日のアルカテル・ルーセントとの協業を手始めに次々と戦略的なアライアンスを発表している。

　アルカテルとの協業内容は、3G（第三世代移動体通信）を発展させた高速通信を可能とする技術「LTE」に関する開発合弁会社を設立するというもの。矢野社長は、「アルカテルは固定電話に強い。一方、当社はITシステムを構築するSI力を持っていることに加え、日本がモバイルとブロードバンドで世界を先行している環境下にある。2社の力を合わせれば、固定通信と移動通信の両方で世界トップクラスになれる」と言い切る。両社はLTEを第一歩として今後も複数の分野で協業を進める。NECのIT事業とアルカテルのネットワーク（NW）事業の融合で、「NGNの主戦場に十分な力を発揮できる」というわけだ。

　2月14日には、マイクロソフトやオラクル、BEA、EMC、ヒューレット・パッカード、サン・マイクロシステムズなどとのアライアンスを発表。子会社でISPのビッグローブが提供するサービスプラットフォームを中心に法人向けアプリケーション提供の拡充を図ることが狙いだ。アウトソーシングやSaaSなどの事業拡大を視野に入れていることに加え、外資系ベンダーとのパートナーシップで「グローバル化を進める」としている。

　グローバル化については、2月19日にSAPと提携。SAPのERPとNECの業種別に特化した製品・サービスを組み合わせることで「ソリューション力を強化する」という。中国などアジアを中心にグローバル事業の体制も固めていく。

　NGNを切り口に、グローバル事業の拡大も見据えた策を講じたわけだが、そもそも同社がNGNを成長の柱に位置づけた理由は何なのか。矢野社長は、「誰もが未開拓の領域であるため」と説明する。確固たる地位を築くベンダーが存在していないからこそ、同社が切り開くという。07年度（08年3月期）にはNGN関連事業の売上高を前年度の2倍程度にあたる2000億円と見込んでおり、「達成できる」と断言する。近い将来には、4000億円まで引き上げる予定だ。

　IT事業とNW事業の両方を持ち、PBXでは通信事業者とのパイプが太い同社にとっては、NGNを切り口とする戦略を打ち出すのが最適な選択なのかもしれない。

　しかし裏を返せば、ITだけ、NWだけといった単体ベースでは、ITベンダーやNWベンダーと対抗できないことを表明しているのではないか。だからこそ、それぞれの分野で有力なベンダーとのアライアンスが相次いだといえそうだ。今後、双方を持つ強みを十分に発揮することができなければ、戦略的提携が無意味なものになってしまう。