EMCジャパン（諸星俊男社長）は、パートナー事業を拡大する基盤を固めた。サポートセンターの設置や協業強化を踏まえた共同予算の策定、物流センターの設置など、昨年7月スタートの諸星体制から販売代理店の支援制度を拡充してきた。これにより、代理店経由での売上高を前年度と比べて5倍程度に引き上げることを目指す。

　昨年7月に諸星氏が社長に就任して以来、同社はパートナー事業の強化を図ってきた。

　販売代理店の案件獲得を支援する「パートナー・サポート・センター（PSC）」を立ち上げたほか、オンラインによるサポートサービス「チャネル・エクスプレス（CXP）」の設置、販売代理店ごとに1年間の売上高を決め、マーケット開拓用の共同予算を策定するファンドの確立などに力を注いだ。今年1月には、EMCが買収したドキュメンタムの日本法人で社長経験のあるロバート・スティーブンソン氏をパートナー事業部門のトップに据える人事を行った。スティーブンソン氏は、常務執行役員パートナー事業本部兼ビジネス計画担当兼ソフト担当として、EMCジャパンが間接販売で成長できるようなビジネスモデルの構築を計画している。

　今年4月にはエンジニアを対象とした教育・検証の場「ジャパン・エンジニアリング・センター（JEC）」を開設。5月には、迅速な製品出荷が可能な物流センター「サプライ・チェーン・ロジスティクス・センター（SCLC）」の稼働を開始させた。

　スティーブンソン事業本部長は、「昨年から講じてきた策は、これまで当社が行ってきたパートナービジネスの集大成」と位置づける。実際、効果が出始めており、昨年8月の時点で15社程度だった販売代理店は、現段階で30社以上に増加した。販売代理店経由で獲得した案件の売上高に関しては、2007年度第3四半期（07年10－12月）から4四半期連続で前年度比50％増以上を記録している。

　こうした成長基盤を形成できたのは、同社のこれまでの販売代理店支援制度に課題があったからとも考えられる。スティーブンソン事業本部長は、「これまでも販売代理店とのパートナーシップを深めてきたが、どうしても直販の色を消せなかった。そこで、思い切った戦略を打ち出すことが必要と判断した」としている。

　今後は、増えつつある販売代理店の得意分野や事業領域を一段と明確化するほか、2次店に対する支援制度の強化を模索。まずは、「製造業でユーザー企業のすそ野を広げていく」という。また、製品面でセキュリティや仮想化機能などを搭載したストレージ機器など「『手離れが良い』と2次店が感じるようなアプライアンスモデルの投入強化を図っていく」方針を示す。

　売上高については、四半期ベースで成長していることからも「今年度は前年度の5倍以上を達成できる」と自信をみせる。ワールドワイドのストレージ関連機器市場でトップを堅持しているものの、国内市場でトップに向けてシェア奪取を図っている同社が、今回のパートナー事業強化策で、どれだけ旋風を巻き起こすかに注目が集まるところだ。