「Forefront」責任者に聞く

　米マイクロソフトでセキュリティソフト「Microsoft Forefront」を担当するアンドレス・ブランコ・シニアプロダクトマネージャが来日した。これまでの実績や2009年前半に発売予定の次期版「Stirling（開発コードネーム）」の新機能、「Forefront」を担ぐパートナーのメリットをどう捉えているか。単独インタビューを行なった。

　──次期バージョン「Stirling」を開発中だが、現行版と何が違うか。

　3つの観点で機能強化を図る。「包括的」「統合」「シンプル」がそれで、複数のセキュリティ製品を統合してシンプルに分かりやすく管理できるようにする。不正プログラム・アクセスは無尽蔵に増えているだけでなく、手口が複雑・高度化した。そうした脅威から情報システムを守るのは至難の業。複数の対策製品を導入しなければならない。複数製品を稼働させれば、それだけ運用・管理も複雑になり、手間がかかる。

　「Forefront」もクライアントからサーバー、そしてエッジ向けプロダクトと複数の製品群で構成している。「Stirling」では、それらの複数製品を一元管理してシンプルに運用でき、管理者の手間を削減できる。現行版でも打ち出していたコンセプトだが、一元管理できる領域が狭かった。

　──競合メーカーが存在するなか、パートナーが後発の「Forefront」を担ぐメリットは？

　パートナーは間違いなく「Forefront」で大きなビジネスチャンスを得ることができる。外部脅威からの対策といえば、ウイルス対策をイメージするパートナーが多い。しかし、ウイルス対策はすでにコモディティ化した。ウイルス対策を売るだけではセキュリティビジネスは大きくならない。ユーザー企業は複雑化したセキュリティシステムの運用・管理に困っている。「Forefront」はそれを解消できる唯一の製品だ。他社には真似できない。「Forefront」を担ぐことで、販売できる商品が増えパートナーのビジネス拡大に貢献できる。

　──「Stirling」は、4月上旬にベータ版を公開した。パートナーの評価は？

　まだ配布を始めて間もないため十分な情報は集まっていないが、手ごたえは感じている。ソリューションの幅が広がるとの意見をもらっている。日本でもそれは同様だ。

　──現行版の売れ行き、実績をどう評価しているか。

　満足している。米IDCが欧米約400社のパートナーを対象に調べたデータによると、競合製品に比べて「Forefront」を担いだほうが、売り上げや利益、商談数などでビジネスメリットが高いことが証明されている。日本でいえば、地域によっては他国のほうが成長率が高い場合があるが、立ち上がり速度が遅いだけ。問題視していない。

　──事業拡大のための課題は何か。

　マイクロソフトの課題というよりはセキュリティ業界全体の問題がある。セキュリティ対策には、運用が重要であることをもっとユーザー企業とパートナーに伝えないといけない。「導入したら終わり」ではなく、常に正常な状態で稼働している環境を保つことが重要だ。それを理解しているパートナーやユーザーは少ない。運用、プロセスの重要性をセキュリティ業界としてもっと訴える必要がある。