新ビジネスモデルの増加に期待

　店頭でのパソコン用パッケージソフトの売れ行きは、依然として厳しい状況が続いている。BCNランキングによれば、今年5月のビジネスソフト販売本数は前年同月比で20％近く減少している。

　コンシューマ向けパッケージソフトが不振に陥ったのは、インターネットによる販売やダウンロードサービス、月額課金のアプリケーションサービスなどが活発化したことが背景にある。ネット経由の購入なら、ユーザーは量販店に足を運ばず自宅に居ながらにして気軽にソフトの入手やサービス利用の手続きが行える。メーカーは、パッケージ化する手間を省け、返品などの問題を解決することができる。新しいコンセプトで開発したソフトを自社サイトでテスト販売することも可能だ。家電量販店やパソコンショップも、過剰在庫に悩まされることはない。

　こうした事情から、店頭のソフト売り場は数年前より格段に縮小されている。最近はゲームソフトを販売するショップが多く、ゲーム売り場のほうが圧倒的に広いケースも少なくない。

　インターネットユーザーの増加にともなうビジネスモデルの転換は、理にかなっている。しかし、インターネット販売ではパソコンソフトを使ったことがないユーザーに購入してもらうように振り向かせるのは時間がかかる懸念もある。対して、店頭には開拓できる環境が整えられている。ユーザーが自宅の近くにあるショップを訪れ、頼れる店員に最適なビジネスソフトについて尋ねる。すると、店員は、そのユーザーの目的にあったソフトを提案する。しかも、ソフトメーカーではない第三者的な立場で分かりやすい説明を交えてだ。パソコンソフトについて何も知らないユーザーであっても、フェース・トゥー・フェースの説明で、そのビジネスソフトの新規ユーザーになる可能性は高い。

　店頭販売は貴重で重要な流通ルートであることは間違いない。では、低迷する店頭販売を打破する方法はないものか。

　一つの手法として例示できるものに、ソフトバンクBBグループのBBソフトサービスが昨年から立ち上げた自社ブランド「Softbank SELECTION」がある。同社は統一ブランドの戦略で店頭販売の活性化を図ろうとしている。このほど5タイトルを発売し、28タイトルに増やした。まだまだ数少ないが、「今年度（2009年3月期）中に100タイトルを揃える」と、瀧進太郎社長は意気込む。

　「Softbank SELECTION」のビジネスモデルで特徴的なのは、メーカーがソフト開発に専念できることにある。製造から販売、マーケティングなど販促活動、サポートまでをソフトバンクBBグループが担当。流通業が自社ブランドで発売する行為はメーカーのビジネスを奪いかねないとする見方もあったが、「共同がコンセプトであるため、メーカーから反対意見は聞かれない」。ソフト業界で評価を得つつあるようだ。

　インターネットの登場以来、ソフト販売のビジネスモデルは多様化してきている。だからといって、店頭販売をおろそかにするのは新規ユーザーを開拓するうえで機会損失していることになる。店頭販売を絡めた、新しいビジネスモデルの増加に期待したい。