案件受注で滑り出し好調

　インテックとTISの両グループにおける事業連携が急ピッチで進んでいる。インテックホールディングス（インテックHD）とTISが経営統合してから3か月が経過。両グループの連携を推進するITホールディングス（ITHD、中尾哲雄会長）では、それぞれの顧客に自社の主力商材を売り込むクロスセリングを本格化させている。すでに4件ほど受注に至るなど滑り出しは好調だ。6月からは情報サービスビジネスの基盤となるアウトソーシング分野での連携を協議するワーキンググループを立ち上げるなど、相乗効果の拡大を加速させる。

　インテックとTISの両グループが経営統合に踏み切った理由の1つに、顧客企業や得意分野の競合が少ないことがあげられる。統合して3か月が経過し、「当初の予想以上に競合部分が少ないことが確認できた」（ITHDの石井貞行執行役員）と、両グループが連携しやすい構造にある感触を得ている。

　例えば、金融業ではクレジットカードに強いTISと生損保に強いインテック。製造業においてTISは基幹業務系システムに強く、インテックはネットワークに強いなど得意分野が異なる。情報系システムでは、TISはグループウェアのロータスノーツで実績が多いが、インテックはノーツの扱いは少ない。データセンター（DC）事業ではTISは都心型で、インテックは全国にDCを展開するといった具合だ。

　こうした得意分野の違いを生かして、両グループの顧客にそれぞれの得意商材の営業を強化するクロスセリングを実施。4月以降、すでに4件ほど受注に至っている。TISが基幹業務システムを手がける製造業の顧客に対して、インテックの得意分野であるネットワーク部分のSIを提案。これまでのTISは、「ネットワークに強い他のSIerと組まざるを得ないケースもあった」（同）というが、今はインテックが強い味方になる。

　DCはITHDグループ全体で19か所に達する。DCは情報サービスの基盤であることから、6月にアウトソーシングやDCビジネスに関するワーキンググループを立ち上げ、「連携を優先させる」（TISの辻本誠・営業推進本部アウトソーシング企画部長）考えだ。

　TIS本体が東京と大阪の2都市にDCを集中しているのに対し、インテックのDCは全国10か所に点在。強力にネットワーク展開する。地域の電算センターからスタートしただけあり、「地元密着のビジネスも得意」（インテックの松波孝治・ネットワーク＆アウトソーシング事業本部N&O事業企画部参事）とする特性がよく現れている。

　大口案件に強いTISと、地域のビジネスにもしっかり根を張るインテックのDC・アウトソーシング事業の連携強化は、両グループの「ビジネスの基盤を支えるインフラ」（インテックの北岡隆之・ネットワーク＆アウトソーシング事業本部N&O事業推進部長）と位置づけ、作業を急ぐ考えだ。

　連携を進めていくにあたり課題もある。システムの要件定義や開発で日頃使っている単語の意味が両グループで微妙に違っているケースが目につく。営業段階では気がつかなくても、実際の要件定義やシステムの開発段階に移行が進めば、こうした言葉の齟齬が思わぬ障害につながる可能性も否定できない。用語の統一は「早い段階で解決するべき課題」（ITHDの石井執行役員）ととらえ、円滑な意思疎通に神経を尖らせる。

　また、経営統合によって受注体力が向上していることから、大型案件の引き合いもきている。不足気味のプロジェクトマネージャークラスの人材をどう配置するのかなどの課題も浮上している。海外オフショアも含めて、巨大プロジェクトをこなせる体制づくりにも力を入れることで相乗効果を最大化していく構えだ。2008年3月期は両グループの単純合算で連結売上高3224億円、営業利益199億円だったが、2011年3月期にはITHDの連結売上高5000億円、営業利益500億円に拡大させる方針を示す。