Linuxディストリビュータのミラクル・リナックスの新社長に、同社戦略推進本部長を務めていた児玉崇氏が就任した。児玉社長兼最高経営責任者は「第二の創業期」を強調し、注力分野をシフトさせる考えを示した。一般的な業務アプリ向けLinux市場は、成長が鈍化傾向。シェアでも最大手のレッドハットに遠く及ばない厳しい環境下、どう舵を取るか。児玉社長兼最高経営責任者に聞いた。

　――「第二の創業」に位置づけたが、変化しなければならない理由は？

　当社が創業した時の事業目的は、（筆頭株主の）日本オラクル製品を安定稼働させるためのLinuxをつくるベンダーになることだった。しかし、オラクルは独自にLinuxビジネスを展開し始めている。設立時の目的は薄らいだ。環境は変化し、当社のビジネスも変革する時期に入った。業績目標としては3年後に昨年度比90％増の売り上げを目指す計画を立てた。

　――どう変えるのか。

　力を注ぐ分野を変更する。これまではLinuxディストリビューションビジネスの主戦場といえる、一般的な企業の業務システム向けLinux市場に焦点を当てていた。しかし、これからは違う。従来の事業は継続するものの、注力領域は別にする。強みが生かせる分野に経営資源をシフトさせる。具体的には、通信事業者向けシステムとモバイル端末向けLinux、ミドルウェアソリューションへの進出だ。

　――一般的な業務システム向けLinuxは市場規模が大きい。

　確かに大きいが、最大手レッドハットのシェアが圧倒的に高く、正面からはぶつかれない。加えて、市場の成長自体が鈍化している。Linuxの普及はこれまでと同様に進んでいるが、ユーザー企業は無償Linuxを使い始めている。強い競合が存在していて成長も鈍化…。この分野だけにフォーカスしていては成長はない。

　――注力分野に挙げた領域はどう伸ばすか。

　通信事業者向け事業は、一般的な企業と違ってOSに対する要求が特殊で細かい。それだけに柔軟・迅速な対応が迫られる。この要求に対する対応力は他社に比べて勝っている。日本に技術者がいるからだ。米国に本社がある競合とはスピードも質も違う。すでに通信事業者からは高評価を得ており実績がある。まだ成長余地は大きいだけに実績をもとに営業を加速させたい。モバイル端末では米インテルと戦略的協業関係を築いていることが武器だ。また、台湾メーカーが元気な超小型ノートPC分野では、韓国と中国のLinuxディストリビュータと共同出資会社を設立している点を強みにして、台湾メーカーに食い込む。

　――パートナーへの支援策は変わるか。

　Linuxを使ったシステム構築を手がけるSIerは、これまで“広く浅く”の戦略だったが、今後は“狭く深く”つき合う。5社程度の中堅SIerを選定し、そのパートナーを手厚くサポートすることに主眼を置いている。一方、ISVに向けては課題がある。ISVはLinux上で動作するように自社ソフトを変える手間とコストを考え、メリットがあるか疑問を持っている。この攻略にはかなり時間がかかるだろう。