クライアント/サーバー(クラサバ)は、仮想デスクトップ型に置き換わる——。仮想化ソフト開発のヴイエムウェアの三木泰雄社長は、仮想デスクトップ方式こそが、従来のクラサバを置き換える次世代の技術だと宣言した。対抗するターミナルサービス型は、シンクライアントの分野で根強い人気がある技術方式。ライバルのシトリックス・システムズ・ジャパンの得意領域でもある。ヴイエムウェアは自社に有利な仮想デスクトップ型で、ライバルを追い込む姿勢を明確にする。
アプリケーションソフトを仮想化してサーバーに集約するのが「ターミナルサービス型」で、パソコンのデスクトップそのものを仮想化するのが「仮想デスクトップ型」。前者は構造が比較的簡単で、すでに多くのユーザーに使われている一般的な技術。後者は、構造が複雑で管理コストが膨らみがちだが、拡張性は従来のクラサバ並みに高い。有力SIerでは、脱クラサバの方式として、ターミナルサービス型に比重を置きながらも、高い拡張性を求めるユーザー向けには仮想デスクトップを推奨するケースが多く見られる。

三木泰雄社長
ヴイエムウェアの三木社長は、「クラサバからシンクライアントへ移行している国内ユーザー企業は、せいぜい1割程度。残り9割を狙う」と、未開拓市場の攻略を重視。この自信の背景にあるのは、サーバー仮想化ソフトのシェアの高さだ。ミック経済研究所の調べによれば、国内約9割のシェアを獲得。ヴイエムウェアのサーバー仮想化ソフトを使うユーザーに、デスクトップの仮想化ソフトも売り込む戦略を推進する。「サーバーを仮想化しているにもかかわらず、デスクトップを仮想化しないのはナンセンス」(三木社長)と言い切る。サーバー仮想化も、デスクトップ仮想化も技術的には共通項が多く、ユーザーに受け入れられやすいとみる。
11月20日に販売を始めたデスクトップ仮想化ソフトの最新バージョン「VMware View 4」では、デスクトップを収納したサーバーと端末間の通信に使うプロトコルに新方式の「PC over IP(PCoIP)」を採用。端末のタイプやネットワークの通信状況を検知し、データ転送を自動的に最適化する米Teradici(テラディチ)社が開発した通信プロトコルで、仮想デスクトップに採用するのはヴイエムウェアが初めてだという。
対するシトリックスは、ターミナルサービス型と仮想デスクトップ型のハイブリッドで、長年積み上げてきたシンクライアント市場で優位性を発揮する。サーバー仮想化で先行するヴイエムウェアがどこまでシトリックスの牙城に攻め込めるか。シェア争いに拍車がかかるのは必至だ。(安藤章司)