新型インフルエンザの再びの流行で、パンデミック対策に関連したリモートアクセスソリューションのリリースが盛んになっている。パンデミック対策用途を一つの切り口として提案しているというが、それだけではなく、在宅や外出先、支店、取引先などさまざまな拠点と中央のアプリケーションを結ぶことにより、競争力を高められることから、ニーズが高いようだ。
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| 秋山慎一主任技師 |
日立システムアンドサービス(林雅博社長)は、さまざまなコンセプトでリモートアクセスソリューションを販売してきた。リモートアクセスを導入する動きとして、「ディストリビューテッドネットワーク/オフィス/エンタープライズといった呼び方をしているが、本社と取引先、在宅勤務などを有機的につないでいかなければ競争に勝てないという流れがある」(プラットフォームソリューション本部ネットワークプロダクト部の秋山慎一主任技師)という。
すでにVPN(仮想私設網)という形では、リモートアクセスを導入しているケースは多いが、「在宅勤務者と本社を結ぶケースで、自宅のプリンタからは印刷させないなど、セキュリティ対策の点からも着目されている」(同氏)という。パンデミックという観点からの大手企業の引き合いも多いそうだ。
日立システムが取り扱うジュニパーネットワークスのSSL−VPN「Juniper Secure Access」シリーズ、ArrayNetworksのSSL−VPN製品「ArraySPX Desktop Direct」を販売、シンクライアントの方式の一つである「リモートデスクトップ」を実現するソリューションを展開している。通常はユーザーライセンスに基づいて利用するものだが、万一パンデミックが起きた際に、事前に緊急時のライセンスを購入しておけば、期間限定で全社員が社内リソースにアクセスすることが可能になる。
富士通システムソリューションズ(杉本隆治社長)では「10年以上前からリモートアクセスソリューションを手がけている」(ITソリューションサービス本部ネットワークソリューションサービス部の西田修一氏)という。11月にはパンデミック対策にも有効な「Webserve/リモートアクセスシンクライアント構築サービス」を提供開始した。同社では「パンデミックで着目され始めたのをきっかけにソリューションを投入したが、一過性のもので、使い方の一つとしかみていない。むしろ平時の業務での利用を提案している」(同部の小野慎一プロジェクト課長)と話す。リモートアクセスの需要はもともと高かったというが、コストが高く、セキュリティをどう高めるかという部分がネックだった。
「Webserve/リモートアクセスシンクライアント構築サービス」は、1週間という短期間での導入が可能。また、ソフトウェアの「GO−Global」を使って、既存のPCをシンクライアントにすることができ、安価にシステムを構築できるほか、生体認証との連携により高度なセキュリティ担保も可能になる。「パンデミックや事業継続など、さまざまなキーワードがあるが、むしろ日常の業務でどう使っていくかを訴求することが提案のカギだ」(小野プロジェクト課長)としている。(鍋島蓉子)