日本IBM(橋本孝之社長)は7月下旬、パートナー支援策で新たな手を打った。同社の製品を活用してソリューションを開発・販売するパートナー向けの技術・営業サポート施設を開設したほか、パートナーがもつソリューションをPRする支援窓口もつくった。新施策を仕切るのは、今年度(2010年12月期)期首に組織した「パートナー&広域事業部」。陣頭指揮を執る岩井淳文執行役員は、2010年1~6月の実績に好感触を得ている。それをバネに、さらにアクセルを踏む。
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| 岩井淳文執行役員。5か月前に開いた戦略説明会よりも、自信ある表情だった |
新設のパートナー技術・営業支援拠点「IBM イノベーション・センター」(東京・渋谷区)は、ISVを支援する目的で開設した「ソフトウェア・コンピテンシー・センター」をリニューアルしたもの。日本IBMの製品を活用したソリューションをもっており、「PartnerWorld」と称するパートナー制度に参加するITベンダーやISVがこの施設を利用できる。パートナーがもつソリューションの技術検証のほか、マーケティングプラン作成とトレーニングを行う。
あわせて開設した新支援窓口は、「パートナーが売りたいIBM関連商品を販売できる仕組みづくりを整備するためのもの」(岩井氏)としている。従来は「IBMが売りたい商材をパートナーが売るための体制だった」(同)という反省を生かした格好だ。
支援窓口としては、より多くのパートナーを支援できるようにマーケティング専門会社と手を組んだ点が、ユニークで新しい。欧州のIBM子会社のマーケティングを支援するパートナー企業であるオンチャネルと、日本IBMのパートナーのゼネラル・ビジネス・サービスが折半出資で設立したオンチャネル・ジャパンと提携。同社がパートナーの要望を吸い上げたマーケティングプランを立案・推進する体制を整えた。
この二つの取り組みで、下期はさらにパートナー支援を加速する考えだ。岩井執行役員は上期の成果について、具体的な売上高は明言しなかったものの、「パートナーとともに開いた共同セミナーの回数は約3倍に増えている。案件数は確実に増えている」と語り、自信を示した。今年度のKPI(重要業績評価指標)は、「共同セミナー数とパートナーの満足度、そしてビジネスオポチュニティ(見込み案件)数」(川原均・専務執行役員)としており、すぐには売り上げを求めていない。
日本IBMはここ数年、パートナー支援ではさまざまな組織づくりや施策を手がけてきた。ただ、それらが大きな成果を生んだとは言い難い。そんななか、橋本社長の肝入りで、旧パートナー営業部隊と中堅・中小企業(SMB)向けの直販営業部隊を統合して生まれたのが「パートナー&広域事業部」だ。国産コンピュータメーカーに比べて、地方とSMBの市場に弱い日本IBMが試行錯誤を繰り返してたどりついた形だ。それだけに、同部門が果たす役割は日本IBMのSMB事業の将来にとって重要だ。今回の施策がどこまでパートナー支援につながるかは未知数だが、これまでとは違う新たな手法を取り入れている。成果はまだ見えないが、パートナー&広域事業部は今、極めて重要な路線を走っているのは間違いない。(木村剛士)