電通国際情報サービス(ISID、釜井節生社長)は、リーマン・ショックに端を発する世界同時不況の影響を受け、業績が低迷している。同社は、安定的な収益が見込めるストック型ビジネスなどの拡大を急いでいる。クラウド・コンピューティングを一つの軸にして競争力強化を図る。
ストック型ビジネスなどの拡大急ぐ
ISIDの2009年度(10年3月期)の連結決算は、大幅な減収減益で、03年以来の営業赤字に転落した。売上高は前年度比約140億円の減収、営業損益は同約48億円の減益だった。とくに金融業向けビジネスの売り上げの落ち込みが激しく、同24.4%の減収となった。
この低迷ぶりは、ビッグユーザーの業績悪化に左右された部分が大きい。同社の金融業向けビジネスは、その売り上げの3分の1を大手金融機関1社が占めており、売上高の下げ幅が拡大することとなった。他業種向けビジネスも軒並み落ち込んだ。
10年度の第1四半期は、IT投資意欲の回復傾向が強い大手金融業を中心に売り上げが拡大したが、大手SIer各社と比較して立ち直りが遅れている。
そこで打ち出したのが「CLOUDiS」(クラウディス)のブランドで展開するクラウドサービスだ。プライベートクラウドの構築や独自アプリケーションのSaaS提供、BPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)などをそのサービスメニューに揃える。
クラウドビジネスを推進することで、従来目立たなかった「アウトソーシング運用保守サービス」の売り上げ比率を引き上げ、安定的な収益基盤の構築を図る。あわせて、新規業種・業界のユーザーの取り込みも加速する考えだ。13年度にはクラウドビジネス全体で100億円の売り上げを目指す。自社開発パッケージのSaaS化とメニューの充実がユーザーへの訴求ポイントの一つとなりそうだ。
このほか、営業部隊の統廃合も推進。林晃司・ビジネスソリューション事業部副事業部長兼ソリューション企画部長は「日本オラクル部隊とSAPジャパン部隊を統合して、SCMと会計ソリューションを合わせて提案できるようにした」と明かす。日本オラクルのERP「Oracle E-Business Suite」や自社開発の連結会計ソリューション「STRAVIS」などのユーザーにSCMソリューションを提案するスキームを描く。クロスセルによって、新規ユーザーの取り込みを図るというわけだ。
今後は、現在販売している東洋ビジネスエンジニアリングの「MCFrame」や日本インフォア・グローバル・ソリューションズの「Infor ERP LN」、エス・エス・ジェイの「SuperStream-CORE」などのERPについて、「中堅企業向けERPは競合が激しいので、ビジネス的に安定性のあるERPに整理する必要がある」(林・副事業部長)と取り扱いの見直しを示唆する。このほか、独自パッケージのラインアップを増やしていく方針だ。
中期経営計画最終年度である10年度(11年3月期)は、中期経営計画の計画値に対し大幅な未達となる見通し。新規ユーザー層の開拓はもちろん、新規ビジネスであるクラウドサービスが今後の成長戦略を占ううえでカギとなりそうである。(信澤健太)