その他
「中国IT脅威論」の正体は?
2010/10/28 14:53
週刊BCN 2010年10月25日vol.1355掲載
「中国IT脅威論」が日本の情報サービス関係者から時おり聞かれる。中国情報サービス業の売上高が今年、実質的に日本を上回ることが確実視されるなか、「アメリカだけでなく、中国にまでIT産業のイニシアチブをとられるのではないか」と、漠然とした不安が脅威を増幅する。尖閣諸島(中国名=釣魚島)問題や関連の反日デモでも揺さぶりをかけられている。
己の身の振り方で決まる
中国情報サービス産業は、過大評価も過小評価もすべきではないというのがコラム子の見解だ。発展途上なので、政情不安のリスクは常に伴うが、中国の巨大市場なしで日本の情報サービス産業の発展はあり得ないのも厳然たる事実である。彼らの素顔は、ドメスティックな内需型で、貴重な外貨獲得手段であるオフショアソフトウェア開発は、依然として日本からの比率が大きい。このことが日本にとってのアドバンテージになる可能性がある。
つまり、欧米の有力ITベンダーのように世界で活躍する中国情報サービス事業者は、今はまだ限られており、グローバル化が中国の情報サービス産業にとっても重い課題となっている。数少ない海外ビジネスである中国のオフショア開発の日本の占める比率は実に60%近い。日本が中国よりも一歩早く海外進出を成し遂げられれば、少なくともグローバル化の側面で彼らをリードできる。オフショア開発で中国の主要SIerとの関係をこれまで以上に深めつつ、日中連携してグローバルでの影響力を強める方策が有望視される。
だが、現実は、中国へのオフショア開発が伸び悩んでいる。リーマン・ショックで2009年は前年比で8%余りも発注額が減少した。日本国内の仕事が増えておらず、今年も大幅な伸びは見込めそうにない。NTTデータの榎本隆副社長は、「どうして製造工程を海外へ出せないのか?」と、社内にハッパをかける。製造業は、海外市場の開拓とコスト削減の両立に努めているのに、なぜそれができないのか──との苛立ちからだ。
馴染みの外注さんから「仕事がない」といわれれば、つい出したくなるのが人情というものであり、顧客から「情報漏えいが怖いから国内でつくってくれ」といわれれば、得たりとばかりに国内に引き籠もってしまう元請けSIerの担当者がいてもおかしくない。しかし、日本の情報サービス市場が飽和し、コスト高であるという事実は変わらない。巡り巡って国内ユーザーからも早晩見放される。日本でジリ貧になってからといって中国へ出て行っても、すでに手遅れ。もう誰も相手にしてはくれまい。
成長著しい中国情報サービス産業がグローバル化してくるのも時間の問題だ。それまでに日本の情報サービス産業が中国にとって欠かせないものになっておく必要がある。脅威になるのか、頼もしい戦略的ビジネスパートナーになり得るのかは、結局は己の身の振り方で決まる。(安藤章司)
「中国IT脅威論」が日本の情報サービス関係者から時おり聞かれる。中国情報サービス業の売上高が今年、実質的に日本を上回ることが確実視されるなか、「アメリカだけでなく、中国にまでIT産業のイニシアチブをとられるのではないか」と、漠然とした不安が脅威を増幅する。尖閣諸島(中国名=釣魚島)問題や関連の反日デモでも揺さぶりをかけられている。
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