ユーザー企業:高研
設立は1959年。医療機器や教育用生体シミュレーターの研究開発・製造、同社が開発した抗原性の低いコラーゲン「アテロコラーゲン」を原料とした再生医療や核酸医療への応用など、幅広く事業を展開している。
プロダクト提供会社:日本電子計算(JIP)
プロダクト名:中堅製造業向けERP「JIPROS」
生産管理システムを刷新
世界50か国以上で医療・医薬分野の事業を展開する高研(垂水有三社長)。生産管理システムの刷新を方針として打ち出し、日本電子計算(JIP)の中堅製造業向けERP(統合基幹業務システム)「JIPROS」の導入を2005年に決断した。「JIPROS」は、医薬・化粧品業界で実績を積み重ねているパッケージだ。導入に要した期間は、同年9月から翌年10月の稼働開始まで13か月。“現場が使える”システムと、満足している。
「一つの会社に三つの会社があるようだ」。中堅製造業向けERP「JIPROS」を高研に導入した日本電子計算(JIP)の田財宗徳・営業統括本部産業営業部JIPROS担当セールスマネージャーはこう説明する。
高研の事業内容は、医療機器や教育用生体シミュレーターの研究開発・製造、コラーゲンを原料とした再生医療や核酸医療への応用など幅広い。事業は「コラーゲン」「メディカルプラスチック」「生体モデル」が三本柱だ。加工・組立系の製造のほか、配合を主体とするプロセス系生産を山形県の鶴岡工場で行っており、「当初は、独自開発システムで対応しようと考えていた」(高研の石垣信幸・情報システム部課長)という。
過去の苦い経験を二度と繰り返したくないという思いもあった。それまでの生産管理システムは、Excelなどを駆使して、属人化していた業務の改善が期待されていた。しかし、「機能面とネットワーク環境に不満があった。東京営業所で受注登録してから工場までのデータ通信に数十分を要した。安定性の問題も抱えていた。営業と製造の連携はできるようになったが、トラブルが多かった」と石垣課長は振り返る。
2005年には、ボトムアップでシステムの刷新に向けて検討を始めた。JIP以外の3社が検討の土俵に上がり、「本命はほぼ決まっていた」(石垣課長)。そんな劣勢の時期にJIPの田財セールスマネージャーは、「JIPROS」の売り込みで鶴岡工場に出向いた。「大逆転だった」(田財セールスマネージャー)。
とはいえ、その道のりは平坦なものではなかった。前のシステムで「パッケージには懲りている」(高研の臼井哲也・営業管理部長)状況だったため、「JIPROS」に厳しい目が注がれた。求めていたのは、医薬・医療に特化し、導入価格を抑えられるシステムだ。加工・組立系やプロセス生産といった工程に柔軟に対応できることも選定基準となっていた。
アドオン・カスタマイズは前提条件だったが、「JIPROS」は標準機能で実際の業務に適しているパッケージであることが決め手となった。直販で、システム構築からハードウェア導入、保守サポートまでJIPが一貫して請け負う体制も、高研が信頼を寄せるポイントとなった。高研の石垣課長は「『JIPROS』を導入することで、生産計画が明確になった」と実感している。カスタマイズで補ったのは多品種小ロットの滅菌管理の機能など。これまで手書きで記録していた管理表をシステムに置き換えた。
連携製品としては、ウイングアークテクノロジーズのビジネスインテリジェンス(BI)製品「Dr.Sum EA」を採用。ライセンスフリーのこの製品を連携させることで、出荷実績のデータ活用を全社レベルでできるようになった。
以前のように、ネットワークの帯域幅に依存したレスポンス低下に悩まされることはなくなった。「以前はネットワーク環境が悪かったが、もともと『JIPROS』はMetaFrame(現・Citrix XenApp)に対応している。出荷に近い場所にサーバーを設置した」(田財セールスマネージャー)。プログラムとデータをサーバーで集中管理し、クライアント側は画面だけを表示するので、パフォーマンスは大幅に向上した。
今後の計画として、「Windows XP」搭載のクライアントマシンのリプレースが俎上にのぼっている。このほか、会計システムとの連携も検討されているという。(信澤健太)

セーブマンアドバンス(高度救急処置シュミレーター)。生体に近い教育用モデルで医療現場の人材育成をサポートする(写真上)。赤いパッケージは「アテロコラーゲン」。高研が開発した抗原性の低いコラーゲンで、再生医療や核酸医療への応用が期待されている。
3つのpoint
・JIPの導入・運用保守体制に信頼感
・3つの製造部門の工程に柔軟に対応
・カスタマイズを極力抑えた