日本IBMは、自社のクラウドソリューションを「IBM Smart Business」と位置づけ、クラウド基盤や製品、サービス、再販チャネルなどのバリューチェーンの構築を推進中だ。2010年初頭に、クラウド時代に即した「日本IBMパートナービジネス骨太方針」を打ち出し、すべての事業でクラウド中心のビジネスモデルへの対応・変革を急いでいる。しかし、メーカーの論理は、ユーザー企業やシステム提供するパートナーにとって、往々にして不適合な仕組みになりがち。今回からは、IBM製品のユーザーとパートナーのコミュニティを中心に、「現場」が日本IBMの変革をどう捉えているかを検証する。(谷畑良胤)
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iSUC実行委員長の丸谷哲司 コンサルトファーム社長 |
日本IBMが支援する世界最大級のコミュニティがある。IBMシステムを使用、もしくは使用予定のユーザー企業・団体が加入するコンピュータ利用者団体「全国IBMユーザー研究会連合会(U研)」がそれだ。全国15地区で「IBMユーザー研究会」が組織され、この集合体が連合会である。よくあるメーカー主導ではなく、ユーザーが自主的に活動を展開している。日本IBMは、製品やサービスなどの情報提供で協力しているに過ぎない。各地区の研究会では、地場ユーザーが地域密着型の研究・発表会や情報交換などを行っている。
連合会は、年一回、IT知識の研鑽を深めるため、会員による優秀論文を発表する場としての「IBMユーザー・シンポジウム」と、各地区の研究・発表やユーザーが相互に事例を出し合い議論を深める「iSUC(アイザック)」を全国規模で開催している。21回目を迎える今年10月は新潟で開催。3日間を通じて約1200人が参集し、130を超えるセッションが行われた。
今年のiSUCは、日本IBMのクラウド戦略の重点化に伴って、「クラウド」および「国際財務報告基準(IFRS)」をセッションのキーワードとして掲げた。大会実行委員長の丸谷哲司コンサルトファーム社長は、「中堅上位から大企業ではクラウド導入が始まっていたが、U研の大部分を占める中堅下位から中小企業では、何とかクラウドに対しとっかかりをつくろうとしている状況だ」と指摘。クラウドへの取り組みや関心に温度差があり、主要なテーマとすることとした。
U研は、これまでもクラウドに限らずIBM製品の利用に関して日本IBM側に製品・サービスに対するさまざまな改善要求をあげてきた。「パートナーと日本IBMが一体となってユーザーを支援する体制になり、システム導入・支援が手厚くなると期待している。今は、中小企業でも導入が簡単なクラウド・サービスの品揃えを早急に拡充するよう要望している。スピードが重要だ」(丸谷社長)と話す。
これを受けて日本IBMでは、パートナーと協力してクラウドの支援・提供体制を整えると同時に、利用者側がメリットを享受できるように、継続して研鑽・研究する場を設けてU研との連携をより強固なものにしていく。