日本IBM(橋本孝之社長)は2010年初めに、クラウド時代に即した「日本IBMパートナービジネスの骨太方針」を掲げた。この方針のポイントは、中堅・中小企業(SMB)市場において「パートナー(BP)優先」「日本IBMは“黒子”に徹する」ことを、改めて明確に打ち出していることだ。同社の直販営業とBPが競合・重複しないように対象市場を線引きし、BPが売りやすいように、クラウドを中心としたサービス提供体制を敷いた。サービスの「売り物」も揃えた。いま、このビジネス戦略の機が熟し始めている。(谷畑良胤)
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| 岩井淳文 執行役員 |
この骨太方針の骨子をつくった岩井淳文・パートナー&広域事業担当執行役員は、こう強調する。「全国の広域事業のビジネスは、全面的にパートナーとともに推進する」と。クラウド型ビジネスが普及する以前から、同社の広域事業は成長軌道にあり、なかでもパートナー経由のビジネスが大きく伸びている。「パートナー主導の案件数も大幅に増えている」(同)こともあり、クラウドを中心として事業を拡大するにあたっては、とくにSMB領域で、これまで以上にパートナーと共同して推進すべきとの方針にたどり着いたのだ。
その基本路線を実現に導くために打ち立てたのが、クラウドを中心にサービスを提供する新パートナーモデル「IBM サービス・オリエンテッド・パートナリング(SOP)」だ。SOPは、IBM製品やインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)などが提供するクラウド・サービスを再販するパートナーを以下のように分類・構成している。
まずは、(1)顧客との関係構築や既存システムとクラウド・サービスの連携とカスタマイズや保守などを行う「サービス・インテグレーター/リセラー」で、SMB顧客に最も近い存在としてIBMが提供するクラウド、Lotus Live、Tivoli Liveなどクラウド・サービス再販の“最前線”を担う。このほかには、(2)クラウド・サービスの企画・開発・提供とメンテナンス、課金や契約の管理部分を担う「ビジネス・プロバイダー」、(3)アプリケーションやミドルウェアの開発・提供・保守を行う「ソリューション・ベンダー」、(4)投資リスクの最小化を提案してシステムインフラを提供する「プラットフォーム・プロバイダー」で構成した。
上記(2)~(4)に属するベンダーやプロバイダーには、IBM製品の流通卸を担うバリュー・アデッド・パートナー(VAD)のベンダーなどが名を連ねる。この(2)(3)(4)のプレーヤーがクラウド・サービスをつくり出す「協業パートナー」としてリレーションを深め、共同で“最前線”へとクラウド・サービスなどの“弾”を供給するとともに、自社でも顧客に提案する仕組みになっている。
岩井執行役員はこれを「サービスのパートナリング」と呼ぶ。つまり、パートナー同士が有機的に結合し、「バリュー(付加価値)のあるサービス」(同)を生み出そうと目論んでいるのだ。