日本IBMが2010年1月、クラウドコンピューティング時代の幕開けに即して公表した新たなパートナー向け施策のメイン・コンセプトは、「パートナービジネスの最大化」といえるだろう。パートナー同士、あるいは、これまで地域有力企業へのアプローチをしていた同社の直販組織などを有機的に融合し、「バリュー(付加価値)」のあるサービスを生み出すことを主眼としている。日本IBMは、この動きを活性化させるための施策を講じ、“黒子”としてパートナーを支えるというスタンスを貫く。(谷畑良胤)
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| 伊藤昇・広域事業部長 |
日本IBMは、10年1月に「パートナー事業部」と従業員1000人未満の中堅・中小企業(SMB)向けに直販する「ゼネラルビジネス(GB)第一事業部」を「パートナー&広域事業部」に統合した。
これまで、全国の有力企業に対しては、日本IBMが直販していた。この領域を含め、地域をパートナーと組んで営業展開することに見直した。従業員100人以下のスモールマーケットについても、パートナーを支援しつつ積極的に販売促進を展開する。今回の組織再編には、「完全にパートナーと真の協業を行う」(伊藤昇・広域事業部長)という同社の大きな戦略転換を示すメッセージが込められているのだ。
日本IBMが今年のパートナー向け説明会で示した資料には、「2010年 広域事業3つの“Change”」と題した取り組み方針がある。三つの“Change”とは「to Whome(誰に提案するか)」「What(何を提案するか)」「How(どうやって提案するか)」だ。
具体的には、従業員100人未満の企業のほか地方自治体、中小金融機関、医療、文教など、成長が期待できる市場に向けての販売を展開していくことを提示。また、サービスの再販を活発化するためには、パートナーのビジネスモデルを確立したうえで、SMB向けに適したパートナー製品・サービスの販売促進にフォーカスしたマーケティング協業モデルを展開する。すべては「より地域に密着したビジネスを展開する」(伊藤事業部長)ために敷いた仕組みである。
ただ、これをパートナーに押しつけるだけではクラウド・サービスなどの拡大は見込めない。そこで、ビジネスモデルを共同で再構築するために「パートナー・サポート・プログラム」を強化した。このなかでは、パートナーに対して、(1)クラウド基盤構築の研修などを施し、スキルアップを図る、(2)セミナー開催やマーケティングツール作成の支援といった共同マーケティングを展開するとともに、(3)顧客の個別計画と設計・構築を支援するIBMの簡易診断ツールを利用してもらうことなどによって、多くの案件を獲得しやすいようにサポートするというスキームが描かれている。
このSMB向けに営業展開するパートナーに対しては、IBM製品の流通卸を担っているパートナーの日本情報通信やJBグループ、トッパンM&Iなどが「協業パートナー」としてクラウド・サービスなどを供給する。伊藤事業部長は「地域ごとに、きめ細かくパートナーとリレーションを深めていく」としている。