宮城県仙台市で30年以上にわたって銘木専門問屋を営んでいる藤村銘木(藤村泰吉社長)。銘木を仕入れて販売しているが、昨今、家屋の洋風化が進んで和様建築が減ったため、需要低迷に苦しんでいた。2年ほど前からは、一般消費者が使う木工品や木材を使った工芸・民芸品などを事務所内の一角に並べて売り始めた。そんな危機感が募っていた折、ビジネス専用機「楽一」を販売するカシオ情報機器(轟宏一社長)から、簡単にウェブサイトをつくることができ、ウェブで販売もできるサービスの提案を受け、導入に踏み切った。
藤村銘木
会社概要:1974年5月に創業。国産銘木を中心とした無垢床柱・フローリング・羽目板、木炭製品、木製雑貨、建材・住宅資材の販売卸を手がけている。オンラインショップ「木ごころの店 ピノキオ」の運営・販売も行っている。
サービス提供会社:カシオ情報機器
サービス名:ビジネス専用機とショッピングカートなど
藤村銘木が「CASIO Office WEB Service」を導入した経緯
床柱に床框(とこがまち)、落掛、あるいは仏壇など、和室や和様建築には銘木が欠かせない。藤村銘木は、青森ヒバや日光杉、槐(えんじ)など国産の各種銘木や無垢板にこだわり、家屋を建設する建築業者の法人向けに販売している。だが、日本式家屋が減って販売が伸び悩み、「個人相手に木製雑貨の小売りをして売り上げを立てよう」(藤村社長)と、事務所の一角を展示場にして、主に通行人相手に販売を開始したのが2年ほど前。従業員は藤村社長を含めて8人。社長夫人を含めて女性の従業員でも販売できる商材として雑貨に目をつけ、この頃から「全員営業体制」を敷いて販売強化に動いていた。
ある時、地元新聞にこの活動が取り上げられ、お客様が多数訪れたが、その後の売れ行きは芳しくない。そのため、「何かいい宣伝方法はないかと模索していた」(藤村社長)という。実は以前、知り合いに頼んで構築したホームページをもっていた。しかし、年に何回か問い合わせがあった程度と反応が悪く、そのうちに活用しきれずに終了したことがあった。

個人向けに販売を開始した銘木でできた雑貨を販売する店舗を事務所内に設置している(左が現在ヒット中の犬型玩具をもつ藤村銘木の藤村社長と売れ筋商品である梟の壁掛け雑貨をもつカシオ情報機器の相関氏)
そんな藤村銘木だが、ITの導入は早かった。当時の機器の名称を記憶している従業員はいないが、木材業専門の端末だったようで、売上伝票を入力・管理する程度の利用だった。この機器に不便を感じていた同社は数年前、カシオ情報機器のビジネス専用機「楽一」(型番=BX200)に入れ替えた。今では、売上伝票の入力や売上集計、仕入伝票の入力、会計用の振り替え伝票作成など、販売管理に関連する業務をこれ一台でこなす。以前は仕入伝票を手書きしていたのだから、隔世の感があるという。
「楽一」ユーザーである藤村銘木には、当然のことながらカシオ情報機器の営業担当者が常時訪問する。1年ほど前、担当であるSME事業部北日本営業部東北営業課仙台営業所の相関伸幸氏が藤村銘木の店頭に陳列された木工雑貨に目が止まる。当時同社は、「楽一」に搭載・接続できるウェブサービス「CASIO Office WEB Service(COW)」の販売開始して間もない頃だった。COWは自社ホームページ(HP)を簡単に開設でき、ショッピングカート機能でEC(電子商取引)サイトを構築できる。自社製品を簡単にウェブサイトに陳列できるので、導入が伸びていた。相関氏は「きっと役に立てる」と、藤村社長に提案。ちょうど藤村社長は「いい宣伝方法はないか」と悩んでいる最中。両社の思惑は一致。10年4月にHP機能を、6月にカート機能を導入した。

「楽一」のウェブサービス機能を使えば、ホームページやオンラインのショッピングサイトを簡単に作成・更新できる
こうして完成した藤村銘木のカート付きオンラインショップ
「木ごころの店 ピノキオ」には、現在50アイテム以上の製品が並ぶ。そのほとんどは「抗菌・抗カビ・耐久性にすぐれた青森ヒバ材を使った手造り品だ。HPを見て来店する人やHPから商品を買っていくお客様が増えた」(藤村社長)と喜ぶ。前のウェブサイトは業者に陳列商品の入れ替えを頼んでいたが、いまは事務職員が商品を写真撮影した画像を自分でアップしている。「木材加工品だけでなく、黒丹の板や炭を使った植栽を売ろうと考えている」と、藤村社長はアイデアを広げている。(谷畑良胤)
3つのpoint
・新しい領域の商品の宣伝方法に悩んでいた
・自前のHPで集客できなかった苦い経験がある
・自分たちで好きな時に商品をウェブに陳列可能