IBMソリューションの販売を支える団体として、1982年に設立された「愛徳会」がある。もともとオフコンの「AS/400」を販売するコミュニティとしてスタートし、現在は国内SIerなど約130社が会員に名を連ねる。日本IBMと連携し、全国レベルと各地区レベルで各種イベントを積極的に展開しているが、日本IBMのパートナー施策がクラウドをはじめとするサービス・ソリューションも視野に入れた展開にシフトしたことで、その様相は大きく変化した。会の活性化を目的に会員ベンダーの若手で組織する企画委員会が中心となって、10年初めに日本IBMの戦略に即した具体的な行動計画を立てた。(谷畑良胤)
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川本英貴・コベルコシステムICT ソリューション本部営業部東日本 グループグループ長兼愛徳会担当 |
2010年初頭、全国から愛徳会企画委員会のメンバー20人が静岡・天城にある日本IBMの研修施設に集まった。日本IBMの広域事業担当者らを交えて、合宿形式で愛徳会会員各社のビジネス発展を期して、クラウド化が進展する現在の環境の下で何をすべきか、膝詰めで議論するためだった。理事企画担当であるコベルコシステムの川本英貴ICTソリューション本部営業部東日本グループグループ長は「日本IBMが、パートナー制度やソリューションコンセプトを大きく変えた。これに基づき、愛徳会で取り組む『10の協業プラン』を策定した」と振り返る。
プラン作成にあたっては、(1)ミッドマーケット(中堅・中小企業・団体)でのビジネスの拡大、(2)パートナー間の協業(横の繋がり)のあり方、(3)全国IBMユーザー研究会連合会(U研)との連携――などの観点で議論が展開された。これらを軸に、クラウド時代を見据えたビジネスの段階的に発展するための協業プランが練られた。
そのなかで、まず実行に移したのが、会員間の情報共有を活発にする施策だ。例えば、LotusLiveを利用した会員間のテレカンファレンスやTwitterでの情報発信などを駆使し、会員同士がコミュニケーションする場を設けた。川本グループ長は「手を組む相手の詳細を知ることが重要。クラウド・ビジネスで組めそうなパートナー探しにも役立つ」という。情報共有が進化した例としては、ある会員ベンダーのデータセンター基盤を使って、全国の会員がクラウド・サービスを提供するスキームが動き始めている。
協業プランの具体策としては、10年8月下旬、LenovoのPCやInfoprint(リコー)のプリンタなどを組み合わせた「愛徳会モデル」をつくった。“即納モデル”と銘打った、会員がすぐに売れるセット商品だ。このように、会員間の販売連携を活性化する商材づくりも、クラウドを見据えた新たな市場を切り開くための施策の一つである。
10年2月には、漫才ブームにあやかって「愛徳会S-1グランプリ」と名付けたソリューション・コンテストを開催。地区予選から勝ち上がってきた成功事例を発表し、表彰を行った。優秀受賞者には、U研が主催するイベント「iSUC」でも発表の場が与えられた。川本グループ長は「クラウド関連の事例が大半で、時代の変化を実感した」と話す。日本IBMのパートナーの間では、すでにクラウドへのシフトが始まっている。