BCN(奥田喜久男社長)は、カシオ情報機器との共催で、システムインテグレータ(SIer)向けのSMB市場攻略セミナーVol.4「中小企業に適したIT・ネット活用提案とは何か? 成功事例から学ぶ『売れる』商材とシナリオはこれだ!」を2月16日に開催した。セミナーの後半に、ユーザー企業の代表取締役を招き、公開取材のかたちで、IT導入のプロセスやメリットについて“生の声”を聞いた。(取材・文/ゼンフ ミシャ)
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ノークリサーチ 岩上由高 シニアアナリスト |
セミナーの冒頭、「『パソコンが動けばITは十分』では生き残れない」と題して、調査会社ノークリサーチの岩上由高シニアアナリストは、リーマンショックを境に顕著になった中小企業の売り上げ減少の対策として、IT導入の必要性を訴えた。また、「従業員数20人前後を中心とする中小企業は業績状況が大きく変化しており、従来と同じ対処法で時間の経過を待つだけでは、生き残りが難しくなってくる」と語った。
岩上シニアアナリストは、企業のIT導入を促すために、SIerをはじめとした売り手は、IT導入によるメリットをユーザー企業に対して、より明確に提案していく必要があるとみている。「中小企業のIT投資が減っている原因は、経済環境に起因する業績の悪化だけではなく、中小企業がそもそもIT導入の必要性を感じていないことが大きなファクター」(岩上シニアアナリスト)というのだ。
HPを顧客との対話に活用
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カシオ情報機器 SME事業部 武内靖志事業部長 |
中小企業でニーズが高まっている商材として、Twitterなどのコミュニケーションプラットフォームと連動したホームページ(HP)開設のソリューションを挙げた。「中小企業は、会社情報にとどまらず、顧客との対話に活用できるホームページの設置に取り組むべきだ。SIerがその需要に対応すれば、新たな商機が生まれる」(岩上シニアアナリスト)としている。
すでに中小企業向けのホームページ作成ソリューションに取り組んでいるITベンダーとして、カシオ情報機器 SME事業部の武内靖志事業部長が登場し、コンテンツ制作を含め、ユーザー企業のホームページを全面的に作るネットビジネスエントリーシステムをアピールした。
対外評価向上や取引先の新規開拓
システムは、買物カゴ機能やサイト会員へのメールマガジン配信機能などを備えるウェブサービスと、ネット販売支援機能をもつCR販売管理システムから構成される。武内事業部長は、ネットビジネスエントリーシステムの導入によるホームページの活用方法として、対外評価向上や自社のこだわり製品/技術の発信、取引先の新規開拓、副業の推進などを訴求した。
<本紙副編集長が聞いた ユーザー企業の“生の声”>
問い合わせの電話が増えた  |
エヌ・西澤 西澤具邦代表取締役 |
BCNセミナーでは初の試みとして、ユーザー企業の代表者を招き、IT導入の実際について直接聞く公開取材のセッションを開いた。本紙の木村剛士副編集長が、2010年3月にカシオ情報機器のネットビジネスエントリーシステムを導入したエヌ・西澤の西澤具邦代表取締役にインタビューした。
エヌ・西澤は、東京・小平市に本社を置く、割烹着などを作る中小企業だ。製品を卸業者を介して、家庭の主婦などの一般ユーザーや飲食店に販売している。西澤代表取締役は、「パソコンにうとく、昨年まではまったくITを使っていなかったが、業務内容を紹介し、当社の認知度の向上を目指して、カシオ情報機器から提案してもらったネットビジネスエントリーシステムの導入を即決した」と話す。
「以前から、多くのメーカーからIT導入の売り込みがきて断ってきたが、カシオ情報機器とは長年のつき合いがあったので、安心して導入を決断した」(西澤代表取締役)という。決断からホームページ開設までのプロセスは約2か月と速いスピードで進んだ。西澤代表取締役はホームページに掲載する製品写真の撮影だけを自分で行い、製品説明の文章作成など他の作業はすべてカシオ情報機器のスタッフが担当。
ホームページ開設からおよそ1年が経って、成果がみえてきている。西澤代表取締役は「エンドユーザーから製品についての問い合わせ電話が増えただけでなく、当社のホームページを見て『そちらの製品を販売したい』という業者の声もかかってきた」と、ITの導入によるうれしい成果を語った。