NEC(遠藤信博社長)は、このほど国内シェア1位の汎用オープン系高可用クラスターリングソフト「CLUSTERPRO」を販売するパートナーを集めたイベント「CLUSTERPRO FORUM 2011」を都内のホテルで開催した。この製品は、今年で誕生15周年を迎え、仮想化やクラウドコンピューティング環境への対応が求められている。イベントでは「仮想化時代の“スマートHA(高可用性)クラスタ”」と題し、同製品の新しいコンセプトを紹介したほか、国内外のパートナーが同製品の利用例などを発表。パートナー100人以上が参加した。(取材・文/谷畑良胤)
4月と10月予定の追加機能を公表
イベントの冒頭、「CLUSTERPRO」の担当責任者である白浜敦子・第一ITソフトウェア事業部グループマネージャーが、最新版「CLUSTERPRO X 3.0」の開発コンセプトなどを発表した。このなかで白浜マネージャーは「HAクラスタリングソフトと当社のUNIXにおけるミッションクリティカル技術『HAシリーズ』が融合し、『スマートHAクラスタ』と定義する製品コンセプトへと変貌した」と述べ、最新版が仮想化環境との親和性、ミラーリング機能やユーザーインターフェース(UI)などの強化を図ったことを説明した。

NECの白浜敦子マネージャー
昨秋リリースした「CLUSTERPRO X 3.0」が好評で、同社クラスタ製品の2010年度(2011年3月期)の売上見込みは、リーマン・ショック前の2007年度を超える見通しだ。とくに「仮想化環境上での採用が急拡大している」(白浜マネージャー)とのことで、パートナーとの連携で実績が回復に向かったことを紹介した。

会場ではCLUSTERPROの次期追加機能に関するデモンストレーションが行われた
「CLUSTERPRO」の国内パートナーは現在70社となっている。また、この製品は「EXPRESSCLUSTER」の名称で海外展開しており、海外パートナーが65社に達していることを明らかにした。海外市場では「2011年度(12年3月期)は、インド市場に注力する」(白浜マネージャー)と、今年度はインドのムンバイやバンガロール、デリーで製品ローンチイベントを開催してきた経過を公表した。
次に登壇したNECの好光泰章・第一ITソフトウェア事業部エキスパートは、「この10年で仮想化環境での運用が進み、クラスタソフトも進化を遂げる必要がある」と述べ、今年4月に新たに追加する機能「新監視エージェント」の説明を行った。この機能では、クラスタの基本機能としてディスク障害検知やNIC障害検知など、付加機能としてデータミラーリングやサービス状態監視などを強化する計画だ。例えば、「Javaアプリケーションで業務システムを拡張したが、メモリ不足でスローダウンした、といった障害検知が迅速にできる」(同)と話す。また、新機能として、今年10月頃には、フェールオーバー先の負荷を賢く見せるという、未来の情報を予測する特殊技術も搭載する予定だという。

NECの好光泰章エキスパート
仮想化環境への強化、重点的に
これらの改良により、「CLUSTERPRO Xシリーズ」を今年10月頃に集大成し、コア監視機能を強化することで「可用性向上」を図り、UI改善で「運用性向上」を果たし、最新仮想化ソフトへ次々対応して「仮想化環境への最適化」するという3点を同時に実現する計画だ。
「CLUSTERPRO」の次世代方針が明らかになったあと、海外パートナーのノベル幹部が講演。その後、国内パートナーが同製品を使ったビジネス展開例を発表した。このうち、PFUの第一インフラソリューション事業部の山下峰広氏は、「共有ディスク型遠隔ハイブリッドクラスタの構築事例」について講演した。
このなかで山下氏は、「CLUSTERPRO」のプレミアパートナーの技術力を生かして、特定のハードウェアに依存しない幅広い障害検知に対応する先進的なシステム構成例を紹介した。大規模災害を想定した遠隔拠点でデータの安全を確保する「遠隔データミラー型クラスタ」や遠隔地のスタンバイ段階のシステムもクラスタ化する「共有ディスク型クラスタ」のクラスタリング構成例などの事例を説明した。また、イベントの最後の懇親会では、「CLUSTER AWARD」も発表された。