その他
ジョブズ氏、早すぎる永遠の別れ IT業界のカリスマが教えてくれたこと
2011/10/20 21:07
週刊BCN 2011年10月17日vol.1403掲載
IT・コンピュータ企業の経営者で、ここまで死を惜しまれる人物を、記者は知らない。米アップルの創業者、スティーブ・ジョブズ氏が他界し、世界は悲しみに包まれた。「偉大な経営者、天才がこの世を去った」と。56歳、早すぎる別れだった。日本では、ソフトバンクグループの孫正義氏が、いち早く哀悼のコメントを発表した。アップルの直営店で一号店の「Apple Store,Ginza」の入り口には、アップルファンから贈られた無数の花束が飾られた。ソーシャルメディアに書き込まれるコメントは、とても数え切れないほどだ。
確かに、ここ数年のアップルはすごかった。1977年に設立されたアップルが、IBMやマイクロソフトよりも早くパソコンの世界を切り開いたことは、文献などをあたれば知ることができる。だが、1978年生まれの記者が、その歴史をリアルタイムに実感することはかなわない。
アップルという企業を、コンピュータ業界の枠組みを超えて世界の消費者に知らしめたのは、携帯音楽プレイヤー「iPod nano」の初期版を発売した06年だと、記者は認識している。01年発売の「iPod」を小型・軽量化し、低価格で発売した新モデルは、瞬く間に世界で売れ、この分野で王座にあったソニーをいとも簡単に追い落としてしまった。その後、iPodを進化させながら、07年に携帯電話市場に参入。「iPhone」を発売してスマートフォンという新カテゴリをつくり出し、10年には「iPad」をリリースしてタブレット市場を創出した。そして、今年8月、アップルは時価総額で初めて世界第1位に輝いた。ジョブズ氏が、CEOを辞任する2週間ほど前のことだった。
製品が認められて、そのメーカーのトップに注目が集まり、ジョブズ氏の名声は、コンピュータ業界を越えて一気に広まった。そして、不本意なかたちで追い出されたアップルに不死鳥のごとく舞い戻った経歴、聴く者を魅了するエンターテイナーのようなプレゼンテーション能力、長年にわたる病魔との不屈の戦い……。それらがオーバーラップして、彼はカリスマとなった。
ジョブズ氏の死によって、「もうアップルは魅力的な製品を出せないのではないか」とみる向きもある。「ジョブズのようなイノベータはもう出てこない」と、ソーシャルメディアに書き込む人もいる。だが、そんな悲観的な言葉に意味はない。ジョブズ氏が挙げた功績と彼の思考法。ありがたいことに、それを氏はさまざまなかたちで残してくれている。たとえ、アップルの歴史をすべてリアルタイムで感じることができない世代であっても、コンピュータ業界と関係のない人であっても、カリスマが歩んだ道を知ることに大きな価値がある。ジョブズ氏は、次の世代が創出するイノベーションを待っているはずだ。(木村剛士)
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