OKIが自社開発した「CTstage」は、1996年9月、国産初のCTI製品として販売を開始した。これまでの累計販売数は7100セット(2011年3月現在)を超え、国内シェアNo.1のコールセンターシステムとして幅広い分野で導入・運用されている。歴史をさかのぼれば、同社は国産初の電話機を世に出したメーカーだ。1980~90年代に入って電子通信機器メーカーとして、PBX(電話交換機)の市場で頭角を現してきた。そうした経緯を経て、電話交換機という自社の得意領域を生かし、外資系ベンダーが牛耳るCTI市場に参入し、「CTstage」を開発したのだ。(取材・文/谷畑良胤)
小規模利用の拡大を狙い販社と連携
.NET対応が成長のきっかけ  |
坪井正志 執行参与 企業ネットワークシステム 事業部長 |
「CTstage」は、電話、FAX、メール、ボイスメールなどをユニファイド・メッセージとして一元的に管理するシステムだ。90年代以降、コールセンターによる「One to Oneマーケティング」の重要性が高まり、この業務を最適化するために、CTIの需要が旺盛になった。だが、外資系ベンダーのCTI製品は高額なうえに、他のシステムとの連携性に乏しく、多くの企業がCTI導入をためらっていた。
そこで同社は2002年7月、IP(インターネット・プロトコル)テクノロジーを融合した統合コミュニケーションシステムという名称で、マイクロソフトの.NETフレームワークを基盤とした「CTstage 4i for .NET」を出荷。SIP(IP電話などで使われる標準的なプロトコル)やIPv6に対応することで、よりIPベースの情報システムとの統合性を高めた。さらには、従来のUnPBX(音声処理ボードを搭載し簡易PBXとして動作するパソコン・サーバー)アーキテクチャに加え、ソフトスイッチアーキテクチャを採用。この採用で、IPベースでテレフォニー制御が可能になった。これにより、300席以上の大規模センターを構築でき、一躍外資系ベンダーに対抗できるまでになった。
だが、「CTstage」が大きく伸びたのは、これ以前の98~99年頃のことだった。「CTstage 4i」を発売するまでの間は、外資系ベンダーが攻めきれない中小コールセンター向けに主に浸透していた。製品のバージョンでいえば「2.0」になるが、UnPBXタイプの小規模なコールセンターを低コストで構築することが可能になり、外資系ベンダーが手がけない中堅・中小市場を獲得した。同社の坪井正志・執行参与企業ネットワークシステム事業部長は「バージョン2.0がトリガー(きっかけ)となり、『CTstage』はステップアップすることができた。販売も、電話交換機の販売・構築ディーラーからCRMなどを扱うシステムインテグレータ(SIer)まで幅広く販売できる製品となり、高いシェアを獲得するまでになった」と振り返る。
新たに中小規模を攻める そして、「CTstage」の販売15周年を機に、販社との連携をさらに強化して売ることができる製品へと変革を遂げた。今年8月末には、中規模オフィス連携パッケージ「CTstage 5i for IPstage」の販売を開始。「CTstage」と中規模オフィス向けIPテレフォニーシステム「IPstage EX300/MX」を連携させて、オフィス電話システムと統合環境を構築することで、従来比で約30%も価格を抑えた製品に仕立て上げた。
坪井執行参与は、「オフィス電話と高度に連携した200席までの本格的なコールセンターを低価格で導入できる。コールセンターはリプレース市場に変貌しているだけでなく、東日本大震災で事業継続計画(BCP)の構築を目指す企業が増えており、さらに販売機会が拡大している」と語り、No.1シェアを不動のものにする意気込みだ。
10月には、SaaS型コールセンターサービス「CTstage SaaS」の販売も始めた。このサービスは、自社に設備を保有せずにコールセンターを開設したいという顧客を対象に、1席あたり月額2万5000円の定額で提供する。坪井執行参与は、「ここ1年で、戦略上、中小企業向け販売を強化している」という。大規模向けが成熟しつつあるなかで、新たな市場の獲得を急ぐほか、SIerとの連携を強め、より顧客管理などと融合したCTIへと舵を切る。

「CTstage」の発売15周年を機に制作された記念ロゴ