今年9月、ロンドンとシンガポールに現地法人を設立した三井情報(下牧拓社長)。同社の海外進出の背景には、親会社の三井物産を相手にした大口案件の獲得がある。全世界で150余りの拠点に及ぶ三井物産のグローバルネットワーク(NW)を、三井情報が統合する案件がそれだ。グローバルネットワークの再構築は、三井物産の本体だけでなく、グループ会社の海外拠点も対象として攻めていく。
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事業統括 鈴木茂男取締役 常務執行役員 |
ICT(情報通信技術)ベンダーの三井情報は、昨年、三井物産のグローバルIPネットワークを統合する案件を受注した。現在、米国に本社を置く技術パートナーのベライゾンとともに、三井物産の海外拠点でネットワークの再構築を手がけている。2012年度(13年3月期)上期の早い時期をめどに完了する計画で、再構築を進めている。
三井情報で事業統括を担当する取締役常務執行役員の鈴木茂男氏は、「三井物産は全世界で150余りのグローバル拠点をもっているので、今回の案件獲得によって、それなりの金額を見込んでいる」と、案件ボリュームの大きさをほのめかす。
三井情報が今のタイミングでアジアと欧州の主要都市にそれぞれ現地法人を立ち上げ、海外進出したのは、三井物産向けのネットワーク統合案件に柔軟に対応できる体制づくりを目的としている。
そしてさらに、もう一つの大きな狙いがある。三井情報は、三井物産本体でのネットワーク統合の実績を踏まえ、今後、三井物産エレクトロニクスなどのグループ会社をターゲットに据えて、彼らのグローバル拠点において、三井物産本体と同様にネットワークを統合する案件の獲得に意欲を示しているのだ。
三井物産のグループ会社は、ビジネスの相乗効果を図り、世界各国でより効率的な事業展開ができるよう、急ピッチでグローバルネットワークの統合を推進している。三井情報の鈴木常務は、「われわれがこれまで海外に進出していなかったので、現時点で、他のベンダーが彼らのネットワーク統合を行っている。今回、シンガポールとロンドンに現地法人を設立したことによって、三井物産のグループ会社を積極的に攻めるための体制を整えることができた」と語る。三井物産のグループ会社の海外拠点数はおよそ60拠点で、「ネットワーク統合に関して、相当の市場がある」という。
三井情報は、三井物産とそのグループ会社に向けたビジネスを一つの柱とするかたちで、海外事業の強化をアグレッシブに推進していく構えだ。欧米で最先端のICT商材を入手し、成長著しいアジア各国をマーケットとして、それらの商材を販売する。海外で、日系企業が形成する「グレーター・ジャパニーズ・マーケット」をターゲットにするほか、中期的に各国の現地企業に向けたビジネス展開に注力していく。将来、海外事業の売上比率を、2ケタの水準に引き上げる計画だ。(ゼンフ ミシャ)