富士通(山本正已社長)が、国内SI系子会社の再編を急いでいる。2011年10月1日、全地域の中堅企業向け事業を富士通マーケティング(FJM)に任せる体制に変更。12月19日には、全国に点在する複数のソフト開発会社をまとめるために、12年4月1日付で新会社を設立すると発表した。「攻めの構造改革」を掲げる山本社長が、着々と計画を実行に移している。その内容をみるとともに、今後の再編の可能性を探った。
富士通グループの主要なSI・ITサービス会社を挙げると、(1)中堅企業向けSI事業を手がける富士通マーケティング(FJM)、(2)保守・運用サービスの富士通エフサス、(3)データセンター(DC)ビジネスの富士通エフ・アイ・ピー(富士通FIP)となる。そのうえで、各地域にソフト開発を手がける子会社が点在している。代表的なソフト開発企業は、東日本では富士通システムソリューションズ(Fsol)、西日本では富士通関西システムズである。
富士通は、これらの主要SI・ITサービス会社の体制変更を着実に進めてきた。FJMは富士通ビジネスシステム(FJB)を母体にし、2010年10月に発足した。富士通は、「紆余曲折を経て」(山本社長)、FJMに中堅企業向けSI事業を任せた。FJMは発足時、東名阪にビジネス地域を限定していたが、11年10月、全国にエリアを拡大。富士通の地方の営業担当者約240人がFJMに移った。これで、富士通は中堅企業向けSI事業組織を完全に自社から切り離し、FJMに委ねたことになる。
また、富士通エフサスは、強みの保守・運用サービスだけでなく、IT基盤系のSIも手がけられるようにするために、富士通のインフラサービスを担当するスタッフ約170人を2010年4月に取り込んだ。「体制は整っている」と富士通エフサスの今井幸隆社長は明言する。
そして、11年12月19日に発表したのが、各地域のソフト開発会社の再編計画だ。全国を「東日本」「西日本」「九州」の3地域に分け、東と西ではその地域の既存ソフト開発会社を経営統合して新会社を設立し、九州では09年4月に設立したソフト開発会社の下に、新会社をつくるという、かなり大胆なものだ(図参照)。以前から再編の噂があった地域ソフト開発会社の体制変更が、現実になった格好だ。
主要子会社の再編に動く山本社長だが、これで終わりではなさそうな雰囲気もある。FJMの古川章社長は、「これが完成形とはいえない」と含みをもたせた発言をする。また、今伸び盛りのDC事業を展開する富士通FIPが再編の枠内には入っていないことも気になる。DCを使うサービスは、ほかの子会社の事業との連携メリットが大きい。ある富士通子会社の社長は、「富士通エフサスと富士通FIPがくっつけば、面白い(融合した効果は高い)」と漏らしている。
子会社のなかには、まだ組織が未整備と考える社長もいる。クラウドが本格化する2012年。大なたをふるって組織を変える今の富士通だけに、新しい年に新たな体制変更の動きがあっても不思議ではない。(木村剛士)