中小企業向けの会計システムに強いオービックビジネスコンサルタント（OBC）が、小規模法人向けに「奉行Jシリーズ」の提供を開始する。第一弾は会計編で、来期には給与編を提供することを明らかにしている。

　重要なポイントは、「小規模法人の自計化支援」だ。会計事務所と顧問先の利用を考慮して、帳簿入力方式と仕訳伝票入力方式で入力したデータを一元管理。どちらからでも修正できるようにしている。オンラインダウンロードで、いつでも試用することができる。ユーザーが購入を決断すれば、その場で即時にライセンスを発行し、正式版の利用へと移る。料金体系は、年間の期間ライセンス料金制度を採用。導入後は、チュートリアルや導入手順の動画を無償で提供する。標準搭載する「iメニュー」では、導入後のQ＆Aや税制改正情報・プログラムの更新情報を一覧で表示する。

　「奉行J」は、OBCにとって非常に野心的な製品だ。中堅企業向けの「奉行V ERP」、中小企業向けの「奉行iシリーズ」に続き、V/ｉ/Jの三層モデルを構築することになる。すでにある小規模法人向けの「奉行Jシステム」について、西英伸・営業本部マーケティング推進室室長は「一般商流向けで、パッケージの流通は残しておく必要がある」と考えている。一方、「奉行J」は会計事務所がパートナーとなっており、一般商流に強かったOBCにとっての新しい挑戦となる。大原泉・営業本部広報室室長取締役は、「奉行ユーザーの会計事務所の数はざっと3000ほど。そのうち、会計人パートナー制度「ASOS」の会員数が500程度。ミロク情報サービスや日本デジタル研究所と比べてゼロが一つ足りない。まずは、会員数1000を狙う」としている。

　強力な会計事務所ネットワークと顧客基盤をすでに築いている競合ベンダーにとって、OBCは、当面、脅威とはなり得ないだろう。しかし、市場の活性化にひと役買う可能性がある。プレーヤーがほぼ固定していたなかでの新規参入が、小規模法人の自計化率を少しでも向上させる好材料となると期待したい。

　なお、OBCは「奉行J」を“OBCクラウド”と称している。西室長は、「OBCクラウドとは、ダウンロードクラウドのこと。データベースもアプリもクラウド上にあるわけではない」と説明する。製品がパッケージレスで、会計事務所からの紹介があればすぐにダウンロードできるほか、「iメニュー」で常に最新の情報を得られる特典などが“OBCクラウド”のクラウドたる由縁なのである。大原取締役は、「一般にいわれるクラウドは、必ずしもコストダウンの手助けにならない。業務のプロセスの一部だけをクラウド環境に移行した場合、むしろコストが膨らむし、セキュリティのリスクも発生する。ベンダーにとって最も問題となるのは設備投資だ」と話す。いまだにクラウド事業には慎重な姿勢を貫いていることがうかがえる。（信澤健太）