統合基幹業務システム（ERP）を海外拠点に展開する日本企業の数が増え続けている。ITベンダー各社は、これに応じてグローバル事業を拡大しようと四苦八苦している。しかし、多くのERPベンダーやシステムインテグレータ（SIer）のグローバル化は中途半端にみえる。

　日立ソリューションズは、グローバル化に本気の姿勢をみせるSIerだ。中村輝雄・産業・流通システム事業本部グローバルビジネス推進本部本部長は、「これまでのグローバル化は、日本の手法を海外の日系企業に横展開するという発想だった。当社が目指すのは“真のグローバル企業”だ」と断言する。“真のグローバル企業”とは何か。4月1日付で変わった組織体制にその一端がうかがえる。

　同社は2012年に入って、ERP事業のグローバル体制の整備に着手した。米Hitachi Consultingから北米や欧州における「Microsoft Dynamics」事業の移管を受け、4月1日付で社内に「Dynamicsビジネス推進センタ」を設置している。従来、中国子会社と協力し、主にアジア圏の日系企業向けに中堅・中小企業（SMB）向けERP「Dynamics AX」の導入サービスなどを手がけてきた。加藤英也・グローバルビジネス推進本部Dynamicsビジネス推進センタ部長は、「アジアだけではなく、北米や欧州などを含めてグローバルでシステムを統括したいというニーズが高まっていた」と、体制整備の背景を説明。中村本部長は、日本本社に置く「Dynamicsビジネス推進センタ」を“参謀本部”に見立てて、現地企業と日系企業のグローバルプロジェクトに対応する意向を示す。マイクロソフトの米本社との太いパイプを生かして、いち早く最新情報を入手する考えだ。

　「Dynamics」事業は、旧Hitachi Consulting部隊のほうが豊富な実績をもっている。北米で導入が進んでいる独自テンプレートやノウハウを、日本本社をはじめとする部隊に逆輸入するアイデアがあるという。例えば、保守部品のメンテナンス要求に対してフィールド保守員に指示を送る「フィールドサービスオートメーション」は、米国で約50サイトの納入実績をもつ。こうした海外でのベストプラクティスを有効活用する。

　「『Dynamics AX』を名指しで導入したいという要望をもらうことがあるし、海外拠点にERPを導入する際には必ず候補に挙がる」と、加藤部長は手応えを感じている。機能面では独SAPなどの先行勢に劣るが、SMBの海外拠点の現状の業務レベルでは「Dynamics AX」で十分な場合が多いという。

　グローバルで一貫した事業体制を整備するのは自然の流れだ。日立ソリューションズは、2015年に「Dynamics」事業での売上高100億円を目標に掲げる。マイクロソフトにとっては強力な援軍になりそうである。（信澤健太）