【ハイブリッド型ビジネス編】 【アスプローバ】
パッケージの提供を中心に
クラウドはパートナー経由で
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| 徐嘉良総経理 |
アスプローバの現地法人、派程(上海)軟件科技有限公司(アスプローバ上海、徐嘉良総経理)は、現地企業へのアプローチとして生産スケジューラ「Asprova」シリーズのパッケージソフトを中核に据えており、堅調にユーザーを増やしている。クラウドサービスについては、一つの工場単位で詳細なスケジュールを作成することができる「Asprova APS」でクオリカと販売パートナー契約を締結。クオリカの子会社である高律科(上海)信息系統有限公司(クオリカ上海)が日系企業向けに提供している。
昨年、アスプローバ上海は売上高が前年比10%増で成長。この要因は、日系企業向けビジネスの売上規模を維持しながら現地企業のユーザー開拓に力を入れたことにある。現時点で中国でのユーザー数は、日系企業が40%、中国企業が60%になった。徐総経理は、「売上構成比は日系企業のほうが多いが、今年に入ってからは日系企業がITへの投資を抑えており、苦戦を強いられている。現地企業に販売のアプローチをかけることが優先事項だ」としている。
ただ、現地企業を開拓するためには、「彼らは価格の安さを求めているので、いかにコストを抑えて利益を確保するかだ」という。その点では、パッケージとクラウドサービスを組み合わせた提供の必要性を認識している。
クオリカとの販売契約では、クオリカの生産管理システム「AToMsQube」とアスプローバの「Asprova APS」の連携稼働を追求。現段階では、中国進出を狙う日系企業をユーザーとして獲得することに力を入れているが、現地企業の開拓も視野に入れている。
【NRI】
金融向けビジネスを拡大
現地SIerとの協業を強化
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| 南本肇事業部長 |
野村総合研究所(NRI)グループの野村綜研(北京)上海分公司(NRI北京上海分公司、山野修一支店長)は、中国市場で金融機関向けビジネスに力を入れており、昨年度(12年3月期)に大型案件を獲得するなど順調に推移している。
中国では、日系を中心に外資系の金融機関が中国に進出する動きが活発化しており、しかも、他の金融機関との差異化を図るために顧客サービスの拡充に力を入れている。その一環として、IT化を進めているという状況がある。南本肇・金融システム事業部長は、「日本の金融機関をお手本に顧客サービスを創造しようとしている」という。日系企業と現地企業の両方にニーズがあることから、NRI北京上海分公司では窓販業務システムや資産運用ITシステムなどを提案している。
また、システムの提供だけでなく、クラウドサービスと組み合わせた提案も視野に入れており、「現地のDC事業者と連携を深めるほか、案件ごとに現地のSIerとアライアンスを組むことを模索している」と語る。現地ベンダーとの協業で案件を獲得することができれば、「それを成功事例として、横展開を図っていく」という方針を示している。これによって今年度(13年3月期)は、前年度比30%の売上成長率を狙う。
【電通国際情報サービス】
複合商業施設をターゲットに
ARベースにクラウド提案
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| 泉浩之総裁 |
電通国際情報サービスの子会社である上海電通信息服務有限公司(泉浩之中国区総裁)は、開発が進むショッピングセンターなど複合商業施設に着目し、中国の建設会社や自治体に対してシステムやサービスを提案している。来店者がスマートフォンを使って、施設内に設置したアクセスポイントで情報や特典が受けられる仕組みである。
代表的な技術としてAR(拡張現実)、またシステムを構築するだけでなく、ネットワークを介してコンテンツを配信することなども提案している。
泉総裁は、「中国では、ショッピングセンターなどの建設ラッシュなので、いかに現地の人や観光客を取り込むかを模索している。そのなかで、最新技術を使ったシステムやサービスを導入するようアプローチしている」という。加えて、OSSベースのシステムとコンテンツをクラウドで提供することがキーポイントで、これによってコストを安く抑えることができる。
最新技術を駆使しながら低コストをアピールすることで、「導入事例はまだないが、感触はいい」と、期待感をにじませている。
このような案件を獲得するには、現地企業とのパートナーシップがカギを握ることになり、「現在、不動産のデベロッパーとつながりのあるベンダーとアライアンスを組もうとしている」段階だ。
有力な現地ベンダーとの協業を
これまで日系企業を主なターゲットとしてきた日系ITベンダー。それが今は、中国の現地企業に対して、いかに案件を獲得するかというフェーズに入っている。迅速かつ低コストで導入できるクラウドサービスを使いながら、いかに案件を増やしていくかがビジネスの拡大を左右する。そのこととあわせて、多くの現地企業をユーザーとして獲得するためには、中国の事情をよく理解している現地ベンダーとのパートナーシップが必須となる。自社のクラウドサービスを広めるためにも、販売代理店というかたちで、有力な現地ベンダーといかに協業を果たすかが成否の分岐点となる。