3月11日の東日本大震災によって、2011年は企業の災害対策に対する関心が一挙に高まったとみられていた。バックアップ分野に大きなビジネスチャンスがあるとみるITベンダーが多く、今年から本格的に導入案件が増えると踏んでいるようだ。しかし、中堅・中小企業(SMB)は、そもそもDR(災害復旧計画)の必要性を認めない傾向があることが、シマンテックの独自調査で判明した。シマンテックは、ユーザー企業に対して「DRを構築するメリット」を改めて提案するよう、販社に訴えている。
米シマンテックは、「2012年版中小規模企業を対象とした災害対策調査」を実施した。調査対象は、社員249人以下のSMBで、世界の約2000社となっている。その調査結果から、日本企業100社のデータだけを抽出しての分析だ。最も気になるのは、「災害復旧計画を策定しない理由は」という質問に対する回答(複数回答)である。「必要性がない」が36%と3割以上を占め、「優先するものではない」(28%)、「自社のコンピュータシステムはビジネスクリティカルではない」(26%)、「技術や人材の欠如」(26%)、「コストが高い」(21%)などと続く。
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メッセージラボジャパン 遠藤敦子 マーケティング本部長 |
シマンテックのSaaS部門であるメッセージラボジャパンの遠藤敦子・シマンテックSMB&シマンテックドットクラウドマーケティング本部長は、この結果を踏まえて、「システム内のデータに対して重要性や価値を認めていないSMBが多い」と分析する。システムの機能が停止すれば生産性の低下につながることを気にしていないケースが多く、「SMBにバックアップ関連の製品・サービスを売り込むためには、現状でどのようにシステムを活用しているのかを改めて把握して、バックアップでどのようなメリットが享受できるかをきちんと伝える必要がある」と認識を新たにしている。そこでシマンテックは、販社への支援策として「バックアップに最適な製品と組み合わせて、ユーザー企業が経営の観点からデータを活用するためのコンサルティング活動などをサポートする」としている。
実際、SMBのシステム活用は会計管理が中心で、経営革新に向けてデータを有効活用するケースはまだ少ない。ITベンダーは経理関連のデータをバックアップすることの大切さをアピールするだけでなく、経営に生かすために多くのデータをバックアップすることを提案している。しかし、その提案がSMBには響いていないとみられる。
シマンテックは、「ユーザー企業がバックアップを意識するような環境を整えることが重要だ」とみている。東日本大震災で、昨年はバックアップのニーズが高まったものの、ユーザー企業が予算を計上していなかったなどの事情があって、ベンダーの予想に比べてビジネスが拡大しなかったのが実際のところだ。それだけに、今年度を案件獲得の年と捉えてビジネスを拡大しようと躍起だ。しかし、“笛吹けど踊らず”にならぬよう、SMBを攻める場合は、提案にひと工夫、ふた工夫を凝らす必要がある。(佐相彰彦)