仮想化ソフトは、引き続き大きな成長が見込めるビジネスになっている。SMB(中堅・中小企業)で導入・検討が進んでおり、ユーザー企業のすそ野がますます広がっているからだ。この動きに呼応して、関連製品・サービスの領域も広がっている。また、「プライベート」を中心としてクラウドサービスへのニーズが本格化していることも、成長を後押ししている。(文/佐相彰彦)
figure 1 「市場規模」を読む
バーチャルマシンソフトは前年比43.0%増
国内仮想化ソフト市場は拡大傾向にある。IDC Japanによれば、2011年はハイパーバイザーの「バーチャルマシンソフト」が前年比43.0%増の280億3200万円に拡大。デスクトップ仮想化など「バーチャルクライアントコンピューティング」が前年比7.4%増の141億6900万円となった。2011~2016年のCAGR(年平均成長率)は、バーチャルマシンソフトが17.5%、バーチャルクライアントコンピューティングが7.4%と予測している。
サーバー仮想化のニーズが高まり、節電対策やディザスタリカバリ(災害復旧)対策としてバーチャルマシンソフトを導入するケースが多くなっていることが市場拡大の要因となっている。また、デスクトップ仮想化の導入意欲が高まっていることも拡大要素として働いている。仮想化技術がサーバーやクライアントだけでなく、ストレージやネットワークにまで浸透していることから、IDC Japanでは、今後は仮想環境の運用管理がポイントになると捉えている。
国内仮想化ソフト市場規模の推移
figure 2 「販社支援策」を読む
SMB開拓に向けて販社の支援を強化
市場拡大の条件が整いつつあることを受けて、仮想化ソフトメーカー各社は、ユーザー企業のすそ野を広げるために販社に対する支援の強化に力を注いでいる。販社支援の強化は、SMBに製品の導入を促すことにつながるからだ。
ヴイエムウェアは販社向けに、ソリューションに特化したトレーニングや販売支援プログラムを拡充している。シトリックス・システムズ・ジャパンは、販社が顧客開拓しやすいようにVDI(仮想デスクトップインフラ)分野でSMB向けアプライアンス「Citrix VDI-in-a-Box」を発売した。日本マイクロソフトは、SMBのサーバー仮想化導入を促進するために、富士通マーケティング(FJM)と協業した。レッドハットは、ユーザー企業が契約期間であれば製品の最新バージョンを常に利用でき、しかも最大10年間のサポートと保守が受けられる「サブスクリプション」を提供し、販社に好評を博している。
仮想化ソフトメーカーによる販社支援の取り組み
figure 3 「活用状況」を読む
SMBの活用は「検討中」を含めて4~6割
SMBの間でサーバー仮想化の導入意欲が高まっている。ノークリサーチは、年商5億円以上500億円未満のSMBに対して、サーバー環境の実態と展望に関する調査を実施した。そのなかでサーバー仮想化の活用状況をたずねた結果では、「活用中」2~4割、「活用を検討している」を含めると4~6割に達している。
ただし「サーバー仮想化技術を活用する際の障壁」という質問に対して、「サーバー仮想化によって得られる投資対効果が不明確」とする回答が年商5億円以上50億円未満のSMBで28.7%に達するなど、投資対効果の問題が最大の壁であることもわかった。
SMBでは、サーバーを仮想化したいという意欲は高いものの、投資対効果がネックになっているようだ。このことから、ノークリサーチでは、仮想化が物理サーバー台数の削減以外にどのようなメリットをもたらすかという活用目的の広がりと、サーバー仮想化の活用に要するコストとの比較が重要な判断材料になるとみて、「サーバーリソースの最適化を図る」「システムの安定稼動を図る」など、サーバー仮想化の幅広い活用目的を訴求することが導入を促すポイントになることをITベンダーに訴求している。
SMBにみるサーバー仮想化の活用状況
figure 4 「関連市場」を読む
出荷減の「仮想化サーバー」が復活
仮想化ソフトと関連性が深いハードウェアの一つとしてサーバーがある。IDC Japanによれば、仮想化環境を構築するために出荷された「仮想化サーバー」は2011年、出荷台数が前年比0.4%減の8万9348台と、国内で仮想化が普及し始めた07年以降、初めて減少した。これは、2011年に東日本大震災をはじめ、急激な円相場の高騰、タイ洪水に伴うサプライチェーンの寸断などが起こったことによるものとしている。
しかし2012年は、07年前後に仮想化環境の構築に向けてx86サーバーを導入したユーザー企業のリプレースが活発化することでプラス成長になるとみる。2016年の国内仮想化サーバー市場の出荷台数を11万3468台と予測している。また、サーバー市場のなかでの仮想化サーバー率は2016年には20.9%になるとみており、2011年の14.4%から6.5ポイント伸びるという。
IDC Japanでは、サーバーメーカーや販社、仮想化ソフトウェアや運用管理機能を提供するソフトのメーカーや販社にとって、単なる仮想化によるサーバー統合といった提案にとどまらず、例えばクラウド化への視点を加味した提案が重要になると捉えている。仮想化環境のメリットをユーザー企業に提供できるベンダーが仮想化市場で主導権を握ることになる。
国内仮想化サーバー市場の出荷台数の推移