BCN(奥田喜久男社長)は、12月7日、SIer(システムインテグレータ)向けのセミナー「SIerのためのビジネス講座 Vol.3『スマートデバイスの業務利用を推進する方法、教えます!』」を東京・千代田区で開催した。共催は、アイ・オー・データ機器、京セラ丸善システムインテグレーション、トレンドマイクロの3社。セミナーでは、スマートデバイスの市場動向や、業務利用する際の懸念事項の解決策、有力なソリューションなどを紹介した。SIerを中心に約100人が参加し、熱心に聴講した。(取材・文/真鍋武)
法人への普及はこれから
セミナーの前半では、スマートデバイスの市場動向や、業務利用の際の懸念事項を中心とした講演が行われた。
まずICT総研代表執行役の齊藤和アナリストが、「スマートデバイス市場動向と最新トピック」と題して基調講演。齋藤アナリストは、スマートデバイスの出荷台数が2011年度に2628万台、12年度に3087万台、16年度には4210万台と、堅調に増加していくことを解説した。一方で、法人向け出荷台数の比率では、11年度が4.9%で、普及は進んでいないと指摘。「価格やセキュリティなどの問題が、法人のスマートデバイス導入を阻害する要因となっている。しかし、今後はキャリアが法人に対する取り組みを強化していくので、導入が進むはずだ。16年度には、法人導入比率が12.6%になるとみている」と見通しを述べた。
次に、「モバイルのビジネス利用拡大でなにが起きるのか? ~隠れた端末利用の増加と企業が行うべきこと」と題して、トレンドマイクロ エンタープライズマーケティング部マーケットデベロップメント課の坂本健太郎担当課長代理が講演した。坂本担当課長代理は、「法人のスマートデバイスへの取り組みは、セキュリティ対策よりMDM(モバイルデバイスマネジメント)が先行している。しかし、スマートデバイスに向けた不正アプリなどの脅威は急速に増えている」と指摘。脅威が顕在化した具体例として、不正アプリをダウンロードしたばかりに、スマートフォンがハッカーに乗っ取られ、遠隔操作によって会議中の会話を盗聴されたというケースを挙げた。そのうえで、「セキュリティ対策からデバイス管理までを包括的にカバーすることが重要だ。トレンドマイクロは、包括的なソリューションを提供している」とアピールした。

(写真左から)ICT総研代表執行役 齊藤和アナリスト、トレンドマイクロ 坂本健太郎担当課長代理
業務利用の目的を明確に
後半のセッションでは、講演者が自社で展開するスマートデバイス関連ソリューションの魅力を伝えた。
京セラ丸善システムインテグレーションGB営業部ITサービス営業の林勇吾グループ長は、「モバイル活用を促進するサービス利用事例を一挙公開! ~モバイル環境でのBI利用は当たり前の時代に」と題して、モバイル対応BI(ビジネスインテリジェンス)ツール「Yellowfin」を紹介。林グループ長は、「BIツールをモバイルで利用することへの必要性が高まっていて、現在、当社への問い合わせの約7割が、モバイル利用についての案件だ」と市況感を述べたうえで、「これまでのBIツールは、分析した結果を共有する機能を搭載していないものが多かったが、『Yellowfin』は、自動アラート機能や、ツールのなかでコメントしたり、ディスカッションしたりする機能を標準搭載している。拡張性にもすぐれ、最大1サービスで60万ユーザーが利用したという実例もある」とアピールした。また、医薬品の製造・販売を手がけるフジタ製薬の導入事例を詳細に説明した。
最後に、アイ・オー・データ機器システム営業部の中村一彦営業推進担当部長が、「オフィスサイネージ『デジサインキューブ』とタブレットで変える情報伝達」と題して講演。中村営業推進担当部長は、「デジタルサイネージは、大型ディスプレイを利用して、不特定多数の人に配信するものが多い。しかし当社はタブレットへの配信を強化して、不特定多数の方に配信するという枠を取り払った。『デジサインキューブ』では、社員が持つタブレット端末や社内フロアに設置したディスプレイに、売り上げの進捗やレクリエーションの写真などを表示する活用法を提案している」と訴えた。
スマートデバイスは、コンシューマを中心に利用が進んでいるものの、法人の領域では、運用コストやセキュリティ対策など、導入の阻害要因は少なくない。また、さまざまなソリューションがあるので、導入する際には目的を明確にする必要がある。今回のセミナーに参加したSIerが、エンドユーザーに寄り添って、スマートデバイスの業務利用を進めていくことを期待する。

(写真左から)京セラ丸善システムインテグレーション 林勇吾グループ長、アイ・オー・データ機器 中村一彦営業推進担当部長