セキュリティ大手のシマンテック(河村浩明社長)は、中堅・中小企業(SMB)事業拡大の一環として、販売パートナーの営業現場に向けた支援を強化している。2012年に、コンサルティング会社と共同でディストリビュータ/リセラーの営業現場の担当者を訪問し、製品情報や業界トレンドなどの情報を提供するキャラバンを開始した。2013年はキャラバンを強化する。さらに、ディストリビュータと密に連携し、SMBに販売しやすい提案を企画して、インターネットを通じてリセラーに案内することに取り組んでいく。全国でシマンテック製品の販売拡大を目指す。

パートナー営業統括本部長
関屋剛常務執行役員 シマンテックは、これまでディストリビュータとリセラーの経営層や主幹部に対して、フォーラムを開催したり、リベート(報奨金)制度を展開するかたちで、販売パートナーを支援してきた。しかし、サポート対象となる経営層/幹部と、日常的にユーザー企業への提案活動を手がける営業現場の間に情報ギャップが生じていた。シマンテックがパートナーに提供した情報は現場まで行き届かず、パートナー支援はなかなか販売拡大につながらなかったのだ。
とくにSMB事業では、ユーザー企業に密接する販売パートナーの営業現場の提案力がカギを握っている。シマンテックはそう判断して、2012年、営業現場の担当者を直接訪問する全国キャラバンを開始した。このキャラバンは、コンサルティング会社のスタッフに教育を受けさせ、彼らをシマンテックの代行として販売パートナーの営業現場に送るかたちのもの。マン・ツー・マンで営業担当に接して、シマンテックのオプション製品を活用する提案方法を教えるほか、セキュリティ業界のトレンドについての情報を提供する。
システムリカバリやエンドポイントセキュリティなどのシマンテック製品を取り扱うディストリビュータ/リセラーの数は、全国で数千社を超えている。シマンテックはこれまでの約1年間で、販売パートナーのごく一部を訪問することができたが、2013年もキャラバンを続ける。指揮を執っているパートナー営業統括本部長の関屋剛常務執行役員は、「ここにきて、売り上げアップの成果が出てきている。訪問したパートナーは、当社製品の販売が平均15%で伸びている。一方、まだ訪問していないパートナーには、変化がみられない」と説明する。
キャラバンが販売を促進することができたのは、「営業担当がこれまで十分に把握していなかったオプション製品の提案ができるようになったからだ」(マーケティング本部の福永啓蔵チャネルマーケティング部長)とシマンテックではみている。
確かにキャラバンが成果を発揮しているとはいえ、5000社ほどもあるリセラーの営業現場をすべて訪問するには、リソースの限界がある。そこでシマンテックは、2013年、インターネットによる情報発信に取り組もうとしている。現在、ディストリビュータと密に連携し、シマンテックの製品を活用してSMBに販売しやすい商材ポートフォリオを企画しているところだ。2013年4月をめどに、メール配信やウェブセミナーの開催などによって、新規商材をリセラーの営業担当に案内することを計画している。
セキュリティ市場が成熟している状況にあって、未開拓のマーケットとして注目を浴びているSMB。シマンテックは、キャラバンというオーソドックスでありながらも、広範囲で実行するという意味ではユニークな施策を打ち出して、販売パートナーの営業現場に自社製品のノウハウを浸透させ、競合に先駆けてSMB市場の開拓を狙っている。(ゼンフ ミシャ)