スマートフォン向けの耐衝撃ケースなどをネット販売するノーゼンローズドットコムは、ハングリードが開発した多店舗在庫管理システムを採用した。ハングリードの「Robot-in」をベースにカスタマイズしたサービスで、オンライン上で複数のネットショップの在庫をほぼリアルタイムで自動的に監視するものである。在庫切れを心配することなく、多店舗で思い切った販売攻勢をかけられるようになったことで、2012年のノーゼンローズの売り上げは倍増した。
ユーザー企業:ノーゼンローズドットコム
スマートフォン向けの耐衝撃ケースなどを販売するネット通販会社。2011年にAmazonに出店した後、楽天やビッダーズなど多店舗展開に乗り出している。
サービス提供会社:ハングリード
サービス名:多店舗在庫管理システム「Robot-in」
【課題】複雑化した在庫管理をどうするか

売れ筋商材のiPhone用耐衝撃ケース ノーゼンローズドットコムは、代表の皆川健治氏が2011年から本格的に立ち上げたインターネット通販会社である。ネット通販で最もコストがかかるのは、在庫や配送にかかるインフラまわりなので、皆川代表はAmazonの在庫、配送システムに相乗りする「フルフィルメント by Amazon(FBA)」サービスを活用。FBAを使えば、自ら倉庫業者や運送会社と契約することなく、Amazonの強大なインフラを割安に活用できる。実際、国内でも多くのベンチャー系のネット通販会社が利用している。
FBA活用の流れで、まずはAmazonに出店したノーゼンローズは、タイミングよく米国から仕入れたiPhone用の耐衝撃ケースが大ヒットし、みるみるうちに売り上げが増えた。だが、売れ行きのよさを知ったライバル店が類似商品を多く揃える動きが活発化したため、「Amazon店だけでは、いずれ限界がくる」(皆川代表)と判断。楽天やビッダーズなど国内主要ネットショッピングモールにも出店し、多店舗展開をすることで販売力を高め、売り上げを伸ばす戦略を打った。
ここで課題となるのが、在庫管理や梱包出荷、配送などをどうするかだ。自前でインフラを用意するとなると、逆に配送料が高くなってしまいかねないため、「FBAマルチチャネルサービス」を使うことにした。FBAは基本的にAmazonへの出店者向けのサービスであるものの、他のネットショッピングモールに出店する店舗でもFBAを利用できるようにしたのが「FBAマルチチャネル」である。しかし、多店舗展開を決めた2012年春時点では、FBAマルチチャネルに対応した在庫管理システムが、国内にはほとんど存在していなかった。
【決断と効果】在庫管理をロボットに任せて本業に専念
大手から中小まで、さまざまなITベンダーやSIerに当たったが、大半が手組みなので納期やコストが折り合わない。そこでたどり着いたのが、多店舗展開するネット通販ショップの在庫管理を、ほぼリアルタイムで自動的に把握する在庫管理ロボットを開発しているハングリードだった。
FBAマルチチャネルにこそ対応していなかったが、ハングリードの小出国弘・開発部マネージャーは、「多店舗管理システムをネットショップ運営者ごとにカスタマイズできる『Robot-in』の技術をベースにしてカスタマイズで対応できると判断した」。ノーゼンローズからの依頼をきっかけとして、FBA対応のカスタマイズを即決。ベースとなる多店舗在庫管理エンジンをすでにもっていたので、カスタマイズは1か月ほどで完了した。
ノーゼンローズが出店先として選んだAmazon、楽天、ビッダーズ、auショッピングモール、mixiモールのショッピングモールに出店した店の在庫を、当初の目論み通り、人手をまったくかけずにリアルタイムで在庫数が把握できるようになった。ノーゼンローズの起業当時は60種類余りの取扱商品点数だったが、直近では180種類を超えるまで拡大している。「もし、五つの店舗の在庫を手動で管理していたら、在庫管理だけでバイトを雇わなければならないので、とても現在のコストに抑えることはできなかった」(皆川代表)と、大幅なコスト削減につながったと話す。
在庫管理をロボットの「Robot-in」に任せ、「自分は新しい商材を探して調達する“本業”に専念できるようになった」(同)ことで、より魅力的な商材を手に入れて多店舗展開することによって、2012年の売り上げは前年比倍増と好業績を上げることができた。(安藤章司)

ノーゼンローズドットコムの皆川健治代表(右)と、ハングリードの小出国弘・開発部マネージャー3つのpoint
複数ネットショップの在庫管理を自動化
Amazon FBAマルチチャネルでコスト削減
商材開拓に専念して売り上げが倍増