サイボウズ(青野慶久社長)は、2013年1月17日、業務アプリ構築クラウド「kintone」で利用できるアプリケーションをダウンロードできるウェブサイト「kintoneアプリストア」をアップデートした。“新装開店”と称して、メイン画面や個別のソリューション画面を刷新。パートナー企業の独自アプリも追加し、より多くのユーザー企業の獲得に乗り出した。(取材・文/信澤健太)
8社15種類のアプリが揃う
「kintoneアプリストア」は、2012年10月にサイボウズが公開したウェブサイトだ。公開当初、30種類以上の自社開発アプリを揃えた。営業支援(SFA)、ワークフロー、顧客サポート、案件管理、顧客リストなどである。ダウンロード数は無制限で、カスタマイズは自由なのが特徴となっている。12年12月3日時点で、500弱のダウンロードを数える。
最新のアップデートでは、8社15種類に上るパートナー開発のアプリを追加したほか、ウェブサイトを強化。基幹系をはじめ、事務改善系、労務系、営業改善系など、5分野のアプリを新たに揃えた。オプロの「見積書・請求書帳票出力」やNTTラーニングシステムズの「社員情報登録パック」、ブレインコンサルティングオフィスの「ポイント制退職金管理ソリューション」、タイムコンシェルの「受発注管理ソリューション」、ニシム電子工業の「故障障害対応進捗管理アプリ」などがある。
とくに注目したいのが、内田洋行が提供する販売管理業務パッケージ「スーパーカクテルデュオ販売」のオプションである「スーパーカクテルデュオ販売タブレットオプション」だ。「スーパーカクテル」に蓄積されるデータを「kintone」と同期。これによって「kintone」のAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)を通じて、タブレットから基幹データへのアクセスを可能とする。外出先や作業現場からでも、タブレットやノートPCのブラウザ上で基幹データの情報を確認することができる。すでに12年12月に発表済みのアプリで、「アプリストア」にも掲載することとなった。
パートナー開発のこうしたアプリを掲載することで、サイボウズは単独で用意するアプリでは対応しきれない領域をカバーできる。「Microsoft Excel」や人手で属人的に処理している業務からアプリへの置き換えを狙う。
新しいウェブサイトのポイントは、パートナーが開発したアプリに関する問い合わせへの誘導だ。メイン画面には、各ジャンルごとの「スペシャルソリューション」カテゴリを新設。あわせて、ユーザー候補とパートナー候補それぞれからの問い合わせアイコンを用意した。ソリューションの個別画面では、問い合わせや別サイトリンクのアイコン、有償バッジなどを加えた。
問い合わせを受けた場合、まずはサイボウズの「kintone」ソリューション担当が対応する。内容に応じて、直接回答したり、パートナー窓口に繋いだりする。「kintone」はサイボウズとの契約だが、アプリの契約はパートナーとユーザーの間で締結するかたちとなる。パートナーは、サイボウズに対して掲載料や成約にかかる仲介手数料を支払う必要はない。
クラウドインテグレーションを加速
パートナーにとっての掲載メリットは何か。「『kintone』に関して教育してほしい、アプリをつくってほしい、認証を連携させたいなど、どんどん要望が出てくる。パートナーもそれを理解しつつある」。青野社長がこう話すように、クラウドとイントラネット、あるいは他のクラウドを組み合わせて提供するクラウドインテグレーションをパートナーが担う機会が生まれている。「アプリストア」は、それを加速させる一つのトリガーとなる可能性がある。サイボウズの田村悠揮ビジネスマーケティング本部kintoneプロダクトマネージャーは、「『アプリストア』に来てもらえるような仕組みづくりを進める」と意気込んでいる。
サイボウズの毛海直樹・ビジネスマーケティング本部BPM部kintoneアライアンスプロジェクトマネージャーは、「パートナーは、独自ソリューションとのAPI連携やコンサルティングサービスの提供を通じて付加価値を提供できる。例えば、東レ経営研究所は、独自の『kintone』を活用したコンサルティングサービスを提供している」と強調し、新規パートナーの参加を呼びかける。
目標は、2013年中に最低でも50社以上のパートナーを獲得することだ。田村プロダクトマネージャーは、「地方のITベンダーとうまく連携しながら全国展開をしていきたい。ITの“地産地消”を目指す」としている。
「kintone」は、大企業から個人まで幅広く利用されているが、全体でみると中小企業が多い。そのため、中小企業にとってウェブサイトのわかりやすさはもちろん、パートナーからの手厚い支援が不可欠となる。こうした状況を踏まえたのか、ウェブサイトの強化はわかりやすさの向上に重きが置かれている。パートナー向けには、すでに「kintoneパートナー認定資格制度」を用意しており、トレーニングメニューや「kintone」開発環境を無償で提供するほか、技術的に支援する。