【バンコク発】自動車メーカーなど製造業を中心に、日本企業のタイ進出は、この1年で急拡大している。背景には、中国一辺倒だった工場を分散配置してリスクヘッジするため、タイなどに次の生産拠点を求めている動きがある。これに呼応して、日系企業のグローバル展開を支援するシステムインテグレータ(SIer)は、相次いでタイに事務所を設け、攻勢をかけている。ITホールディングス(ITHD)グループのインテック(中尾哲雄CEO)も、2012年3月に現地法人「インテックシステムズバンコク」を設立し、海外で実績のある製品・サービスを展開中だ。同社はすでに、現地日本人スタッフによる24時間365日対応のヘルプデスクやコールセンターサービスなどで顧客を獲得している。(取材・文/谷畑良胤)
AFTAで関税ゼロに
域内でのシステム統合が加速
インテックシステムズバンコクの初代社長に就任したのは、中国・上海地区を担当する総経理代理を務めた経歴をもち、アジア経験が豊富な中智弘氏だ。インテックは、東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G、石田壽典社長)の生産管理・販売管理・原価管理システムを構築する製造業向けERP(統合基幹業務システム)「MCFrame」の日本におけるトップセラーとしてのノウハウを生かし、中国に生産拠点を置く日系企業の営業展開を強化している。中社長は、上海地区での実績を買われて、タイ法人の立ち上げに抜擢された。
インテックがタイに進出した理由について、中社長は、「China+1」の影響で、日系企業のタイ参入の動きが活発化していること以外にも、次のような中・長期的な判断があるという。「ASEAN自由貿易地域(ASEAN Free Trade Area=AFTA)の地域経済協力圏が形成され、2015年にはベトナムなど後発加盟国を含めて域内の関税がゼロになる。ITシステム面では、ASEAN全域でシステム統合する流れが顕著になり、当社の出番が多くなる」(中社長)。
同社によれば、インテックシステムズバンコクが営業対象と想定している年商10億~100億円の日系企業は、タイ国内だけで100社以上あるという。前号で紹介したB-EN-Gの海外拠点向けERP(統合基幹業務システム)パッケージ「A.S.I.A.(エイジア)GP」を導入した産業機器や車輌、高所作業車などの総合レンタルを手がけるレント・タイランドを支援した。現在、同社はタイで四つの事業を展開中だ。
生産管理やPOS、ERPなどの「クラウド・サービス」、現地日本人スタッフによるヘルプデスクとコールセンターサービスの「BPOサービス」や「ITサポートサービス」、ASEAN諸国での通信やコンテンツビジネスの事業化企画の「通信サービス企画」で、多言語・多通貨・クラウド・マルチカンパニーのキーワードをカバーするソリューションを提供している。このなかでクラウド・サービスでは、ITHDグループのクオリカが開発した製造業向け生産管理システム「AToMsQube(アトムズキューブ)」を販売し、B-EN-Gの「A.S.I.A.GP」を扱っている。中社長は、「創業して2年で、『A.S.I.A.GP』などで2社の支援をした。本格稼働までの期間が短く、情報システム担当者が不足する日系企業にも受け入れられやすい」といい、B-EN-GタイのA.S.I.A.の「コンサルティングパートナー」として積極的にシステム導入支援をしている。
情報システム担当者の不足で
ヘルプデスクなどの案件が多い
タイに進出する日系企業の場合、多くは「日本を含めた中国やASEAN地域の複数拠点で一括した対応を求めている」(中社長)。アジアの各拠点を結んでリアルタイムに状況を把握しようというニーズが高い一方で、現地拠点には最低限の人員配置ですまそうとする企業が少なくない。だからこそ、情報システム担当者が不足する環境でも使えるITシステムであることが重要だ。
また、タイの拠点で導入するITシステムを判断するのは、日本にいる情報システム責任者であることが多い。その場合の条件として、水害の影響を心配しての災害対策やセキュリティ、日本本社との情報連携、クラウド・サービスであれば月額利用額などが判断材料になるという。中社長は「日系企業は基本的にはSE(システム・エンジニア)を置かずに事業を回すことができる環境を構築しようとしている」と話す。
タイに進出する企業にとっては、法人税免除などが得られるBOI(Board of Investment、投資優遇制度)を取得するケースが多い。この要件を満たす会計システムなどの条件整備も重要だ。

インテックシステムズバンコクを立ち上げた
アジア経験が豊富な中智弘社長