クラウドという新しい商材を、どう提案すれば受注につなげることができるか。IT企業の多くの営業パーソンの悩みどころだ。富士通エフサスでクラウド関連の提案に注力している鈴木崇史さんは、ベンダーが提唱するクラウドのメリットとユーザー企業が抱える実際のニーズのギャップを埋めようと、ブレインストーミング(ブレスト)などで客先の課題を引き出す。カスタマイズ対応を重視して、お客様それぞれのニーズに応えている。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/大星直輝)
ブレストで課題を把握
当社も含めて、多くのITベンダーはクラウドと仮想化のソリューション提案に力を入れている。私自身も、クラウド関連の案件が多くなっていて、前週の号では、大手菓子メーカーから大口注文をいただいたサーバー仮想化・BCPの案件についてお話しした。しかし、クラウド・仮想化はニーズが旺盛といっても、すべての案件が受注に結びつくわけではない。ベンダーが提唱するクラウドの利点と、お客様が求めていることは、必ずしも合致するわけではない──。私は、営業の現場を通じて、そのことに気づいた。
クラウドの提案になかなか興味を示さないあるお客様で、システム担当者にブレインストーミングをしていただいた。既存システムの課題は何か。今後、どんなことを実現したいか。ブレインストーミングの結果、お客様は、仮想化によって物理サーバーの数を減らしても業務上でそれほどのメリットが生まれないし、むしろ、今保有しているサーバーをデータセンターに移して運用管理をアウトソーシングしたほうがいいということがわかってきた。私はこれまでの提案を見直して、お客様の要望を汲み込んで再度提案したところ、ソリューションを評価していただき、受注につなげることができた。
複数の利用パターンを用意する当社のサービスメニューも、お客様の複雑な業務と合わなくなってきていると感じている。実際、サービスをカスタマイズしなければ響いてこない案件が増えつつある。そんななかにあって、ブレインストーミングなどによって、お客様のニーズを探り出し、それぞれのお客様に適したかたちでサービスを提案することが、私たち営業担当に求められることだと思う。
今後、これまで以上にカスタマイズに力を入れて、他社製品の運用を含めたマルチベンダー対応のサービスを武器に案件を獲得したいと考えている。
最後に、新人時代のちょっとした失敗について語りたいと思う。入社して間もなく、可愛がってもらったお客様に、夜、会食に誘っていただいた。当然ながらお酒も出てきて、会食が初めてでどうしたらいいかがわからない私は、大学生の飲み会のような気分でどんどんお酒を飲んで、かなり酔っぱらってしまった。
「まずい。ここで潰れたら、会社に居られなくなる」。会食が終わるまでなんとか頑張ったが、運の悪いことに、帰りの電車がお客様と一緒だった。結局、私は電車の中で横になり、お客様に介抱してもらうことになった。「若いから、しょうがないね」と、やさしい言葉をかけていただいた。この経験を通じて、最後に助けてくれるのは人と人とのつながりだ、と思うようになった。
●日常使う営業ツール.......... 二つの手帳を利用し、スケジュールと案件情報の管理はばっちり。アポイントメントを入れる手帳と、商談の要点をまとめる手帳を使い分けることによって、重要な情報を見逃さないように努めている。
●上司からのひと言.......... 「鈴木君は、何事にも誠実に取り組み、妥協しない男である。彼は、小さな商談から大規模で長期にわたる商談まで対応しており、すべてに対して、全力で最後までやり遂げる精神力をもっている。また、部門のメンバーやお客様からの信頼が厚く、後輩の相談にも気軽にのっていて、彼を目標とする営業担当者が多い。現状に満足せず、さらなる活躍を期待している」(増山和久・首都圏本部流通ビジネス統括部第二ビジネス部長)