東日本大震災と福島第一原子力発電所事故からの復興活動を進めている福島県(佐藤雄平知事)は、ウェブサイトでのコンテンツ配信に力を入れている。サイトに多くのアクセスが集まっても問題なく接続ができるよう、アカマイ・テクノロジーズのCDN(コンテンツ・デリバリ・ネットワーク)サービスを導入した。震災直後にもこのサービスを無償で利用し、原発事故によるアクセス集中に対応するために活用した経験が導入の決断を促した。県は今後、CDNがバックで支えるかたちで、サイトで福島の復興の姿を発信する。
ユーザー企業:福島県庁
福島県の行政事務を執行する役所である。県のホームページを運営し、情報配信を手がけている。知事は佐藤雄平氏。福島県の人口は約195万人(2013年5月現在)。
サービス提供会社:アカマイ・テクノロジーズ
サービス名:CDNソリューション

県庁が運営する福島県のホームページ。原子力災害情報や復興関連情報などを配信する【課題】アクセスが10倍に急増、接続不能に
「あの日のふくしま」「復興への歩み」「ふくしま元気プラザを開催」。福島県は県庁のウェブサイトで、トピックごとに復興関連のコンテンツを配信し、最新の情報を伝えている。
「県民にとって必要な情報は細かく提供したい」(企画調整部 情報政策課の大山一浩課長)と考えて、アカマイ・テクノロジーズのCDNサービスを採用した。コンテンツを複数の配信用サーバーに複製して、ユーザーに最も近い経路にあるサーバーを自動的に選ぶ仕組みで、アクセスが集中しても円滑なサイト接続を実現しようとしている。
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震災直後の2011年3月14日。福島第一原子力発電所の3号機で爆発が発生し、Twitterに「福島県のホームページに情報がある」ことがつぶやかれる。県民は原発の状況が知りたいと、相次いで県庁のサイトに接続し、15日の朝8時には、アクセスが震災前の平均の10倍に相当する1560万回に増えた。負荷分散装置がトラフィックを処理し切れなくなり、サイトに接続できない状況になった。
情報政策課の遠藤仁・ネットワーク担当は、大至急で対応した。サイトを複製するミラーの構築を検討したり、文字情報を載せてコンテンツを軽くしようとしたりと、いろいろ試してみたが、サイト接続の回復につながらなかった。「悪戦苦闘するなか、15日の夕方にアカマイ・テクノロジーズから、CDNサービスを無償で提供する提案を受けた。まさに救世主が現れたと感謝して、即座にお願いした」(遠藤氏)と振り返る。

企画調整部 情報政策課の大山一浩課長(右)と、ネットワーク担当の遠藤仁主任主査【解決と成果】CDN活用で情報提供を再開
「Twitterで『県はホームページを見ることができないことを知らないのではないか』のようなつぶやきを見て、悔しい思いをした」と遠藤氏。
3月16日の午後にCDNサービスの利用を開始し、ようやくサイト接続の回復にこぎ着けた。原発の状況など、震災関連情報の配信を再開し、「県はちゃんと動いている」(遠藤氏)ことを伝えた。原発のトラブルが続く状況にあって、17日、県庁のサイトに2460万回のアクセスがあったが、CDNサービスのおかげで、問題なく接続することができたという。
福島県は、11年5月の連休明けまで、CDNサービスの無償提供を受けた。その後は、「継続してサービスを受けたいと思いながらも、震災の対応に追われ、アカマイ・テクノロジーズに連絡できずにいた」(遠藤氏)という。サイトへのアクセスが徐々に減っていたこともあって、CDNサービス利用の継続を実現することができなかった。
2012年、アカマイ・テクノロジーズから導入の提案を受けた。遠藤氏は、「今後の震災発生のリスクや、平常時にもサイトに快適に接続することができるメリットを考え、平成24年(12年)度の補正予算を使って、導入を決めた」と語る。CDNサービスの活用によって、ホームページの監視が不要となり、人件費の削減ができるので、導入コストの一部の回収につながったという。
CDNサービスは、アクセスを円滑にするほか、トラフィックを見える化し、アクセス分析を行うことができる。情報政策課の大山課長は、「CDNサービスの導入をきっかけに、ウェブサイトをフルに活用して、東日本大震災の教訓と福島県が復興していく姿を世界に発信したい」としている。(ゼンフ ミシャ)
3つのpoint
サイトへの接続が速くなる
アクセスの分析ができる
今後の震災への備えになる