その他
国のIT戦略はどこまで実現可能なのか 問われる実行力、政府CIOの腕の見せどころ
2013/09/19 14:53
週刊BCN 2013年09月16日vol.1497掲載
安倍政権が掲げる国のIT戦略に、情報サービス産業が関心を高めている。国内IT市場の成長が鈍り、ITベンダーが新規事業を必死に模索する状況下にあって、各社は、政府がうたう「オープンデータ(自治体が有するデータの公開)」や「ITによる農業の高度化」が生み出す商機に期待を寄せている。しかし、国のIT戦略は、どこまで実現可能なのか──。最大の懸念は、“文化”が違う政府と民間企業がうまくかみ合わず、政府の取り組みがITベンダーの新規ビジネス創出につながらない恐れがあるということだ。
国がIT市場の活性化を図るのは、今に始まったことではない。官と民の連携がうまくいかず、失敗した事例が過去にたくさんある。今回、目新しいのは、政府のIT戦略を統括し、企業への橋渡し役も担う「政府CIO」の設置だ。正式な肩書きは内閣官房 内閣情報通信政策監で、今年6月、リコージャパン出身の遠藤紘一氏が初代の政府CIOに就任した。遠藤氏は、内閣総理大臣が率いるIT総合戦略本部で、府省を横断した計画の作成などの業務を担当する。 主に米国の企業で浸透している「CIO」は、Chief Information Officerの頭文字をとったものだ。直訳すると「最高情報責任者」になる。企業でCIOがミッションとするのは、企業内システムや情報の流通を統括することだ。CIOは、会社の運営に携わるボードメンバーで、経営の視点をもって、情報システムをどのように事業の拡大に生かすかについて、CEO(最高経営責任者)に助言する。呼び方が若干違う場合もあるが、近年は日本企業でもCIOが普及し始めている。 CIOは、風通しがよいといわれる米国企業で生まれた概念だ。けっして風通しがよいとはいえない日本の官の世界で、はたして成功するのか。政府CIOの遠藤氏は、イベントでの講演などを聞くと、68歳でありながら、バリバリの現役ビジネスマンという印象を受ける。何より成果を重視し、企業の組織を一新するやり手の経営者でもある。例えば、大手事務機メーカーであるリコーの副社長として、リコーグループ全体の構造改革をリードし、業務の効率化につなげた功績に、その一端がうかがえる。 国のIT戦略を成功に導く遠藤氏の意志は確たるものと考えられる。しかし、戦う土俵には強い逆風が吹いている。政府でIT戦略に携わる担当者は2年ごとに交代する。これでは、安定したIT戦略の実行が難しい。「ダメだと言ったのに、また異動が決まった」と遠藤氏は嘆く。ITベンダー側にも、自社の責任を意識した行動が求められる。受け身の姿勢で政府の動きを待つのではなく、アクティブにIT戦略の実行に参加し、新規ビジネスの創出につなげることが重要だ。政府CIOが設けられたことを好機と捉えて、ぜひ協力して、可能性をものにしたいものだ。(ゼンフ ミシャ)
安倍政権が掲げる国のIT戦略に、情報サービス産業が関心を高めている。国内IT市場の成長が鈍り、ITベンダーが新規事業を必死に模索する状況下にあって、各社は、政府がうたう「オープンデータ(自治体が有するデータの公開)」や「ITによる農業の高度化」が生み出す商機に期待を寄せている。しかし、国のIT戦略は、どこまで実現可能なのか──。最大の懸念は、“文化”が違う政府と民間企業がうまくかみ合わず、政府の取り組みがITベンダーの新規ビジネス創出につながらない恐れがあるということだ。
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