日本ユニシス(黒川茂社長)は、パートナーの活性化に力を入れる。ここ数年、売り上げの減少に対処するために、案件実装の内製化に取り組んできたが、金融機関向けの案件が計画以上に順調な受注を示していることで、2014年、パートナーへの発注金額を20%増やす方針を打ち出している。技術教育に力を注いで、案件を丸ごとパートナーに任せることによって、旺盛な需要に対応する。既存のパートナーを活発に活用するだけでなく、ビッグデータ分析やクラウド構築に強い新規パートナーの獲得にも動く。(ゼンフ ミシャ)

アドバンスド技術部
佐藤和雄部長 日本ユニシスでパートナーへの発注を統括するアドバンスド技術部の佐藤和雄部長は、「下流工程から上流工程まで、案件を丸ごとパートナーに任せる一括外注をどんどん増やしたい」として、2014年、発注金額を20%増やすことを事業計画に盛り込んでいる。技術研修を施して、アジャイル開発やプログラミング言語「Ruby」などについてパートナーの実装スキルを磨き、技術力を高めたパートナーを積極的に活用することによって、見込んでいる案件の増加に備える。
同社は、1万人月の仕事量を抱えていた07年をピークに受注が落ち込み、外部への発注を抑えてきた。内製化によって、案件を自社リソースで実装する方針に切り替えたのだ。しかし、ここにきて強みとする金融業のIT投資が回復し、受注が活発になってきた。日本銀行が調査・公開する「日銀短観」によれば、金融機関の2013年9月のソフトウェア投資は前年比26%増を記録。この追い風を受けて、日本ユニシスは、地銀勘定系パッケージ「BankVision」の10行目の新規採用が決定するなど、金融向け案件が活性化してきた。この動きがけん引して、13年4~9月期の売上高は、2.9%増の1281億2300万円と、計画値を上回った。
しかし、同社は組織再編の一環として、実装を担う技術者を含め、グループの従業員数を削減しようとしている。13年3月31日時点のおよそ8800人を「14年4月までに8000人にする」(龍野隆二・代表取締役上席専務執行役員)という計画を進めているところだ。こうした状況のなかで、「トップラインが伸びている勢いを落とさないために、パートナーを活用することを決めた」(黒川茂社長)というわけだ。組織のスリム化を進めながらビジネスの拡大を図る方針を展開しようとしている。
日本ユニシスは、内製化を進めてきたここ数年の間も、「コアパートナー」と呼ぶ数十社の受託開発事業者への発注を一定のレベルで保ってきた。今回、パートナー活用を強化することによって、彼らへの発注金額を増やすとともに、新規パートナーの開拓に取り組む。クラウドの普及などでシステム開発の需要が減っていることを受けて、システムの機能を定める要件定義や構築後の運用を強みとするパートナーを新たに獲得し、変貌しつつある市場のニーズに応える。
さらに、ビッグデータやクラウド構築を切り口として新規事業を拡大するためにも、パートナーの力を借りる。流通業向けのビジネスアナリティクス(BA)や、「Amazon Web Services(AWS)」「Salesforce.com」などの基盤を活用したクラウド移行を得意とする事業者との提携を目指して、各社との商談に入っている模様だ。
金融業のIT投資回復をカンフル剤に、息を吹き返した日本ユニシス。これをきっかけに、パートナーをうまく活用し、本格的な事業拡大につなげる。金融向け案件にとどまらず、新規事業の開発に関しても、パートナーとの提携に積極的に取り組む姿勢をみせるのか。今後の動きに注目したい。