お洒落な洋服や雑貨を取り揃え、センスに敏感な人に人気を集めるセレクトショップを運営するユナイテッドアローズ(竹田光広社長)。ポイントカード会員のデータを分析し、販売戦略や出店戦略に活用することで、ビジネスの拡大に取り組んでいる。同社は、リゾームが提供する小売事業者向けデータ分析ツール「戦略会議シリーズ 顧客分析システム(顧客分析システム)」を導入し、この10月に稼働を開始した。これによって、分析が簡単にできるようにし、分析作業が特定の担当者に集中しすぎない体制を構築した。
【今回の事例内容】
<導入企業> ユナイテッドアローズ全国で衣類などのセレクトショップを運営する。設立は1989年。2013年3月期の連結売上高は1150億円。店舗数は208店舗、従業員数は3092人
<決断した人> 事業支援本部 販売支援部 CRMチームの武山剛士氏(左)と野田邦弘氏。上層部に対して粘り強く導入のメリットを訴え、決断につなげた
<課題>担当者二人でデータの分析を行っていたので、分析作業の迅速化、人に依存しない体制づくりが急務となっていた
<対策>直感的に操作できるUIを備えているリゾームの「顧客分析システム」を採用し、専門スキルがなくても分析ができるようにした
<効果>担当者二人の負荷が減り、より多くの分析依頼にスピーディに対応することが可能になった
<今回の事例から学ぶポイント>データ分析を専門家に任せるのではなく、使いやすいツールを入れて、事業部長など、広い範囲でデータ分析を行うことが大切
半年に数十件の分析依頼
ユナイテッドアローズは、「UNITED ARROWS」や「BEAUTY&YOUTH」など、複数のブランドを展開し、現在、全国で208店のセレクトショップを運営している。会員制のポイントカードとして、スマートフォン向けアプリケーションである「HOUSE CARD」を用意しており、このツールを通じて、年齢や性別、属性など、利用者のあらゆる情報を集める。データ分析によって、購買パターンを浮き彫りにし、販売戦略や出店戦略に生かしている。
3000人以上の従業員を抱えるユナイテッドアローズだが、マーケティングや販売促進に用いるデータの分析を行っている担当者はわずか二人。事業支援本部 販売支援部のCRMチームに属する武山剛士氏と野田邦弘氏だ。両氏は、販売支援部のメンバーから「高い金額の買い物をするトップレンジのお客様は増えているか減っているか」とか「男性客と女性客、どちらが伸びているか」などの調査依頼を受け、分析を行って結果をレポートする。
二人だけでこなす分析の依頼件数は、半年で数十件に及ぶ。数字のミスは許されないので、分析が終わった後、手作業で念入りにダブルチェックを行う。武山氏と野田氏は、こうした多忙な日々を送るなか、分析作業が少人数の担当者にのしかかっていると危機感を募らせた。今、ビッグデータ活用が注目を集めており、今後は、分析依頼の数はさらに増える可能性が十分に考えられる。そんな情勢にあって、分析作業の効率化が急務だった。
上司にメリットを訴え続ける
ユナイテッドアローズでは、もともとBI(ビジネスインテリジェンス)ツールと市販データベース(DB)ソフトを使って「HOUSE CARD」会員の分析を行っていた。しかし、BIツールは使い方が複雑で、求められる結果を出すことができるまで複数の手順を経て作業を行う必要があった。このため、分析に時間がかかるのがネックになっていた。野田氏は、「すべての依頼に応えることは難しかった」と、分析システム導入前の状況を語る。
そんなとき、リゾームから、顧客情報と商品情報をつなぎ合わせて購買パターンを明確にする「顧客分析システム」の提案を受けた。武山氏と野田氏は、デモで実際にシステムを体験してみて、即座にデータを呼び出して、「地区分析」や「年齢分析」など、さまざまな切り口から分析ができるユーザーインターフェース(UI)を高く評価した。ところが、上司に「ぜひ、このシステムを入れたい」と申請したら、「既存のBIツールで頑張れ」といわれて、「顧客分析システム」の導入提案は一蹴された。
しかし、せっかくいい製品を見つけたのに、そう簡単に諦めたくない──。武山氏と野田氏は、分析作業をCRMチームの二人だけでこなさなければならないなど、既存システムの不備を文書化するとともに、直感的に操作できるUIによって担当者不在時には、ほかのメンバーが自分で分析を行うことができるなどのメリットの一覧表を作成。上司に「顧客分析システム」の利点を粘り強く訴え続けた。
データを出店地選びにも活用
導入決断に直結したのは、上司も一緒に、3人で改めてデモを見せてもらったことだった。デモでは、上司はシステムを操作してみて、「これは使いやすい。自分にも使いこなせるかもしれない」と実感した。急いでいる案件で担当者が不在のとき、上司が自らデータ分析ツールを駆使し、すぐに結果を手に入れることができるのが決め手となって、「顧客分析システム」の採用が決まり、この10月に稼働を開始した。
武山氏は、「新しいシステムを導入したおかげで、分析作業がだいぶ楽になった」と効果を語る。「今まで2時間かかった分析が、10分でできるようになっている」と、スピードも大幅に向上しているそうだ。武山氏と野田氏は導入効果を生かし、分析の数とスピードだけでなく、質も向上させることを目指している。「例えば、出店地を選ぶ際、エリアを特定して、1年の買い物客はどのくらい存在するかを地図上に表示するなど、データをきめ細かく分析したい」(野田氏)と、データの本格的な活用を検討していく方針を述べる。(ゼンフ ミシャ)