SAPジャパン(安斎富太郎社長)は、ソフトバンク コマース&サービス(ソフトバンク C&S、溝口泰雄社長兼CEO)と、新たなディストリビューション契約を結んだ。これによって、インメモリデータベースの「HANA」や、BIツールなど、プラットフォーム製品の販路を大幅に拡充し、SMB市場で本格的な展開が進むことになる。SAPジャパンにとっては、SMBを中心により幅広いユーザーの獲得が期待でき、ソフトバンクC&Sにとっては、取り扱い商材のラインアップ充実を実現するとともに、新たなリセラーの発掘による自社の販路強化も図ることができるという大型の協業契約だ。

キャリー・マスレン
グローバルVP 今回、両社が結んだ契約は、SMBへの販路拡大などを目的に、独SAPが2013年にグローバルでスタートした新しいパートナープログラム「PartnerEdge Authorized Resellers Program」にもとづいている。本来的な意味でのディストリビュータの活用を促進し、販路を広げるためのプログラムだ。SAPが同プログラムのディストリビューション契約を結んだ国内企業は、ソフトバンク C&Sが初めて。独SAPのキャリー・マスレン・グローバルバイスプレジデント(VP)中堅企業向けパートナービジネス担当は、「新たなパートナープログラムは、SAPがSMBにリーチするために非常に重要なもの。『HANA』などのプラットフォーム製品も、機能別にモジュール化するなど、低価格で使えるようにしている。当社のメッセージを確実にお客様に伝えてくれて、しっかりデリバリまでつなげられる企業を求めていた」と、この協業の狙いを説明する。
ソフトバンク C&Sは、従来、レポート作成ソリューションの「Crystal Reports」や、データベース製品「Sybase SQL Anywhere」など、限定的なSAP製品を取り扱うディストリビュータとしての販売活動は行ってきた。それが今回の契約で、ERP以外のほぼすべての製品を取り扱うことができるようになった。
さらに大きな違いは、リセラーについても、ソフトバンク C&Sが自社の販売網をより自由に活用できるようになることだ。これまでは、同社が製品ごとにSAPジャパンとディストリビューション契約を結び、SAPの認定を受けたリセラーに製品を卸すという商流だった。そして、既存の認定リセラーは、売り上げに対するコミットメントや人的リソースの準備など、パートナープログラムに対する相応の投資が求められるので、ディストリビュータ側からみると、SAPに厳密に管理された限定的なリセラーとしか取引できなかったことになる。

反町浩一郎
VP 「PartnerEdge Authorized Resellers Program」では、このリセラーの認定プロセスを大幅に簡略化した。極端にいえば、リセラーは、ソフトバンク C&Sから製品を卸してもらうことに同意しさえすれば、SAPの認定を受けられる。結果として、ソフトバンク C&Sにとっては、既存リセラー網の活用が容易になるとともに、このプログラムが、新規リセラー開拓のフックにもなり得るわけだ。
SAPジャパンの反町浩一郎・VPエコシステム&チャネル統括本部統括本部長は、今回の契約について、「本格的なディストリビューションの商流を整備する端緒となる。ソフトバンク C&Sのリセラー網の強みと、SAPのカスタマーベースの相乗効果で、ビジネスのボリュームを数倍に押し上げたい」と、期待を膨らませる。
SAPジャパンは、まずは年内に「PartnerEdge Authorized Resellers Program」の認定リセラーを100社まで拡大する。将来は、数百社のリセラー網を整備する意向だ。(本多和幸)