米CA Technologies(CA、マイク・グレゴアCEO)は、バックアップ/リカバリソフト「CA arcserve」の販売を中心とするデータマネジメント事業部を米Marlin Equity Partners(Marlin)に分割譲渡することを発表した。データマネジメント事業部は、Marlinからの投資を受けて、今年9月末までに独立した新会社として生まれ変わる。「arcserve」は、日本のバックアップ/リカバリソフト市場で上位シェアを維持しているソフトであるだけに、CA日本法人や販社を含めて、ビジネスを手がけるうえで影響が出る可能性がある。なぜ、米CAはデータマネジメント事業部を手離すことになったのか。データマネジメント事業部の責任者を務めるマイク・クレストSVP&ジェネラル・マネージャに話を聞いた。(取材・文/佐相彰彦)
独立会社として再スタートへ
──米CAがデータマネジメント事業部を手離すことになった理由は? 
米CA
マイク・クレストSVP クレスト (CEOの)グレゴアは、社長に就任した18か月ほど前から、当社のビジネスをキーとなるソリューションに絞ることに専念してきた。当社が重きを置いているのは、大企業を主要顧客に据えたビジネスで、大企業に対して当社のスタッフが直接出向いて案件を獲得する手法だ。一方、「arcserve」の販売を中心とするデータマネジメント事業部はSMB(中堅・中小企業)を主要顧客として、販売パートナーを経由して販売してきた。つまり、データマネジメント事業部のビジネス手法は、当社のなかでは一線を画したものに位置づけられることになる。顧客リストとしても、全社的には決して重要なものではなかった。このままでは、他の事業部と補完し合うことは難しいと判断して、データマネジメント事業部を売却することになった。
──この事業部はどうなるのか。 クレスト Marlinからの投資を受けて、独立した会社として生まれ変わる予定だ。早ければ今年8月中旬、遅くても9月末までには設立することを計画している。社名は、まだ決めていないが、「arcserve」を前面に押し出したものにする。
──これまで「arcserve」は、「CA」というブランドがあったからこそ売れていたのではないか。ブランドが変わったということで消極的になる販社が出てくるのでは? クレスト ほかのメーカーの例で、主要製品を売却したことで販売パートナーが不安を抱くケースがあったことを話しているようだが、まず、CAブランドで「arcserve」が売れていたというのは間違っている。「arcserve」のよさを理解していただいた販売パートナーが広めてくれたからだ。長きにわたってパートナーシップを組んでいるケースも多く、とくに日本では、CAブランドよりも、どちらかといえば「arcserve」のほうがブランド力が高いと捉えている。また、データマネジメント事業部は、数年前から独立性をもってビジネスを手がけてきた。データマネジメント事業部の人材は、そのまま独立した会社にシフトするので、引き続き販売パートナーに対する支援ができる。むしろ、当社のほかの部門との兼ね合いがなくなり、さらに販売パートナーへの支援を強化できる。販売パートナーにとっても、新会社の設立はメリットのあることだと確信している。
──米国本社だけでなく、日本法人も同様にデータマネジメント事業部の人材が新会社にシフトするのか。 クレスト その通りだ。米国では、私が責任者を務める。日本法人は、現在、事業部の責任者を務める江黒(研太郎氏)がトップに就任する予定だ。また、CA日本法人とは完全に別会社として、現在、オフィスを探しているところだ。
──日本法人スタッフのモチベーションは、どのような状況なのか。 クレスト 江黒を含めて非常に士気は高い。日本法人のデータマネジメント事業部も、米国と同様に独立していたので、今までと変わらずにビジネスを手がけていく。むしろ、日本の場合は、「arcserve」のビジネスが順調に伸びていたことから、ビジネスが軌道に乗れば人材を増やすなど積極的に投資していくつもりだ。
小回りを利かすことが狙いか
米CAによるデータマネジメント事業部の売却は、グレゴアCEOが描くCAの方向性とデータマネジメント事業部が手がけるビジネスに違いが出ていることから発生したことだが、「arcserve」の販売が決して不振ではなく、むしろ販売が好調であることが、通常の売却とは大きく異なる。クレストSVPは、「さらにシェアを拡大することができる」と言い切る。バックアップ/リカバリソフトメーカーの市場での競争が激しいなか、少数精鋭となって小回りの利く体制を敷いてビジネスを拡大しようとする姿がうかがえる。