日立製作所(日立、東原敏昭社長兼COO)は、7月29日、都内でプラットフォーム分野のユーザー向けイベント「Hitachi Platform Solutions World 2014」を開催した。ユーザー企業の経営を強くし、競争力を向上させるために、ITプラットフォームソリューションをいかに活用するのか、最新の導入事例などを交えながら紹介した。(取材・文/本多和幸)

ブレードサーバーを実際に解体しながら設計思想を解説した
高信頼で高機能、高性能なIT基盤を
イベントの冒頭、主催者を代表して挨拶した橋本崇弘・情報・通信システム社プラットフォーム部門COOは、「ITには、ビジネスの要請にいかに応え、イノベーションをリードするかが問われている」として、ITが企業の成長そのものに貢献することを求められる傾向が急速に強まっていると指摘した。そのうえで、「日立はデータの利活用、ワークスタイルの変革、クラウドなどのトレンドに応えるソリューションで、お客様のビジネスイノベーションに少しでも貢献していきたいと考えている。こうした取り組みをしっかり支えるためにも、高信頼で高機能、高性能なIT基盤をあらためてしっかり確立していきたい」と、方針を説明した。
具体的な取り組みテーマとして、「グローバルレベルでの24時間365日のサービス提供」「データを活用した新たな事業の創造への貢献」「プラットフォームソリューションの即応性向上」の三つを挙げ、ユーザーの経営拡大や業務改革に貢献するソリューションを市場に提供し続ける意向を示した。
基調講演は、東京大学政策ビジョン研究センターの小川紘一・シニア・リサーチャーが務めた。「オープン&クローズ戦略 日本企業のさらなる成長のための条件」と題して、製造業にフォーカスして、日本企業が勝ち抜くための戦略のあり方を解説した。
小川シニア・リサーチャーはまず、「製造業を強くしないと日本経済は強くならない。しかし、日本の製造業には、円高による生産拠点のアジアシフト、地域経済の崩壊、100年に一度ともいうべき産業構造の転換という三つの課題がある」と説明。こうした一連の問題解決に有効なのが、「オープン&クローズ戦略」だと主張した。 オープン&クローズ戦略とは、コア技術を知的財産のマネジメントにより「クローズ」して守る一方で、それ以外の領域は「オープン」にして自社製品の普及を促す戦略で、製品・技術の大量普及と高収益を同時に実現可能だという。
小川シニア・リサーチャーは、「守るべき技術と漏らしてもいい技術をはっきり区分して、オープン&クローズの知的財産マネジメントを行うことで、グローバルの産業構造と競争ルールを自社優位に事前設計することができる」と話し、この戦略こそが、日本の製造業がグローバルでの競争力を取り戻すポイントになると強調して、講演を締めくくった。

(左から)橋本崇弘 プラットフォーム部門COO、
東京大学 小川紘一 シニア・リサーチャービッグデータ利活用に注力
主催者講演では、中野俊夫・ITプラットフォーム事業本部事業統括本部事業主管が、日立のITプラットフォームソリューションがもたらすメリットを説明した。中野事業主管は、「超高速データベースエンジンにより、売り上げの集計を日単位から時単位に短縮し、そのデータを自由に分析することで新たな売れ筋を発見してタイムリーな商品提供につなげたという事例では、エンドユーザーの満足度向上と売上アップを両立させた」と事例を紹介しながら、ビッグデータ利活用のための包括的なソリューションに注力していくことを宣言した。
また、中野事業主管の講演のなかで、世界100を超える国と地域で同社プラットフォーム製品を販売している米日立データシステムズのマイケル・ヘイ・バイスプレジデント(VP)チーフエンジニアも登壇。「例えば、テレコム分野では、フローデータの利活用によってSLAを確保するとともに、ストアデータ分析により問題解決の対応を短縮し、ユーザーの新規カスタマー獲得とサービス満足度向上を実現した」と、事例を紹介しながらグローバル市場におけるビッグデータの取り組みを解説した。
このほか、九つのセッションで、ユーザー企業の経営拡大や業務改革に貢献する日立のソリューションを紹介した。日立のモノづくり企業としての側面にスポットを当てて、高品質、高信頼性、高付加価値製品を開発・製造するための取り組みを紹介したセッションでは、国内での一貫した生産・検査工程をPRした。さらに、設計思想を説明するために、ブレードサーバーの解体を実演し、来場者の注目を集めた。

(左から)中野俊夫 事業主管、
日立データシステムズ マイケル・ヘイVP チーフエンジニア