富士通系のデータセンター(DC)事業者で組織する富士通系情報処理サービス業グループ(FCA、五十嵐隆会長=富士通エフ・アイ・ピー相談役)は、全国の会員が連携した事業継続計画(BCP)や災害復旧(DR)に取り組んでいる。比較的規模が小さく、遠隔地でのバックアップが難しい地方DC事業者が相互に連携することで、大規模DC事業者に匹敵する事業継続性を担保することを狙いにしている。今回の取り組みではFCA会員94社のうち、主に自社でDC施設を運営する事業者38社が参加している。(取材・文/安藤章司)
同時被災すれば意味がない

FCA
五十嵐隆
会長 FCAは、地域でDC施設を運営する事業者を中心にする「FCAデータセンタービジネス相互応援協定」を結んで活動を始めている。今年9月には第1回目の合同訓練を実施。全国を三つのブロックに分け、まずはブロックごとの連絡体制や連絡ルートの確認を行った。
地方DC事業者にとって、手堅く需要が見込める市場は、(1)自治体(2)医療・介護(3)文教の三つである。自治体は地元産業育成を重視しており、自治体と関係が深い医療・介護、文教も同様の傾向を示している。こうした地域の基幹となる情報システムの運用を担うのが、地方DCというわけだ。
とはいえ、もともとFCA会員の多くは地域密着の電子計算センター(電算センター)が前身であることが多く、広域でバックアップをとれる体制にはなっていない。先の東日本大震災では、同じ電力会社管内での相互バックアップはあまり意味をなさないことが明らかになっており、BCPやDRを有効なものにするには、異なる電力会社に属し、しかも同時被災する可能性がほとんどない遠隔地のDC事業者との連携が求められる。地域密着のDC事業者単独ではとても実現できないので、FCAの五十嵐隆会長は、「FCAの枠組みをうまく活用することで、同時被災の可能性が極めて低い遠隔地との相互バックアップの体制の整備を進める」としている。
全国3ブロックで広域連携
FCAでは、「東ブロック」「中ブロック」「西ブロック」の三つに分けて、それぞれのブロックに「ブロック長」と「副ブロック長」の2~3社の連絡窓口・調整役会社を置いている(図参照)。また、ブロック間の調整機能として「ブロック連絡会」も設置し、これらの会社を軸として相互応援協定に参加する38社の連絡・応援体制を整える考えだ。例えば、「中ブロック」のブロック長は富士通エフ・アイ・ピー、副ブロック長は北陸コンピュータ・サービス、三重電子計算センターとした。「中ブロック」の首都圏、日本海側、太平洋側にそれぞれブロック長(正・副)を配置し、ブロック内のどこが被災しても、同一ブロック内で迅速に支援できるようにした。
具体的な連携内容は、先のブロックごとの「情報連携」に加え、DCの非常用発電機を回すための燃料や部品の補充、技術者の融通などが挙げられる。先の震災では「物質的なものだけではなく、技術者など人的な支援が重要だ」(五十嵐会長)ということがわかっている。当該地域に居住する技術者も被災してしまうので、DC事業を継続するために必要な人手が足りなくなってしまうからだ。
基本は同一ブロック内での支援だが、「陸路では難しいが、海路での支援は可能」あるいは「支援をしてほしい物資が遠隔地にしかない場合」などは、「ブロック連絡会」を経由して、ブロックをまたいだ連携を優先するケースも想定している。こうした取り組みによってFCAでは、会員各社のBCPやDR能力を高めることで、ユーザーが安心して発注できる環境を整備し、ビジネスの拡大につなげていく。
データセンタークロスアライアンス(DCXA)
共有/共通/分散三つのキーワードで連携

DCXA事務局
田沢一郎氏 地方のDC事業者同士の連携は、FCAだけではない。データセンタークロスアライアンス(DCXA、増田聡代表理事=TOKAIコミュニケーションズソリューションビジネス推進部部長)は、地方DC事業者22社が参加し、相互バックアップ連携を進めている。DCXA事務局の田沢一郎氏は、「共有、共通、分散」の三つのキーワードを掲げる。
サーバーラックの規格や通信回線、ベースとなる技術などの「共有」を進め、DCを活用したサービスを「共通」化し、さらに全国のDCXA会員のなかで相互バックアップによるリスクの「分散」を推奨している。すでにTOKAIコミュニケーションズ(静岡)とオージス総研(大阪)、北海道総合通信網(札幌)の3社がストレージ同期による遠隔バックアップサービスを始めるなど「数社単位での連携が始まっている」(田沢氏)。今後も連携の具体的な事例が増える見通しだ。