日本IBMは、ビジネスパートナーの布陣を大きく変えることで、新しい販売チャネルの開拓を急ピッチで進めている。クラウドやデータ活用、AIに強いパートナーを自陣営に集めることで、新しいビジネス創出につなげていくのが目的だ。日本IBMでは、新しいビジネスパートナーの布陣を「パートナーリーグ」と名付け、2018年12月末までに100社余りのパートナーを獲得している。19年は、パートナーリーグの活動を軸に「ビジネスパートナー関連ビジネスの売り上げを倍増させる」(三浦美穂・執行役員パートナー事業・アライアンス事業統括本部長)と強気の計画を立てる。(安藤章司)

三つの“リーグ”で布陣を形成

 日本IBMのビジネスパートナー施策「パートナーリーグ」は、IT基盤の構築に強いパートナー、ISV(独立系ソフト開発会社)を中心とするパートナー、データ活用に長けたパートナーの主に三つの布陣で構成されている。

 IBMのクラウドサービスは、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureなどライバルとなるパブリッククラウドベンダーに先駆けて、仮想化基盤のVMwareに対応。まずはVMwareに強いパートナーを「IBM Partner League for VMware」として18年2月に組織化。5月には、ISVからなる「IBM Partner League for Solutions」、そして10月に「IBM Partner League for Data」のリーグを立ち上げた。それぞれは通称、VMwareリーグ、ソリューションリーグ、データリーグと呼ばれている。

 18年末までに、VMwareリーグにはインテックやクリエーションラインなどIT基盤の構築に強い20社、ソリューションリーグにはISVなどで64社、データリーグにはデータ活用に強い会社を中心に35社が参加を表明。重複参加を除けば、100社余りがパートナーリーグに名を連ねている。ソリューションリーグに参加したワークフローソフト開発のエイトレッドは、「これまで接点のなかった新しい顧客の開拓につなげられた」(平田圭・経営戦略室室長)と、日本IBMと歩調を合わせたセミナーや営業活動で成果があったと話す。

 データリーグでは、IoT基盤サービスのソラコム、DMP(データマネジメントプラットフォーム)のインティメート・マージャー、トレジャーデータなどが参加。IoTやデジタルマーケティング、業種に特化したデータ活用、データサイエンティストを多く抱える会社が中心となって構成されている。
 

データ活用で案件規模を拡大へ

 課題はリーグに参加する多くが他社プラットフォームも活用している専業パートナーであること。もう一つは現段階ではリーグに集まる案件の規模がそれほど大きくないことだ。小粒な案件が多いことについては、日本IBMも認めており、その打開策のカギを握るのが「データ活用とAIだ」(三浦執行役員)と話している。
 
三浦美穂
執行役員

 IoTや個人情報、医療データなどの“データから富を生み出す”取り組みは、まだ始まったばかりで「データの8割はオフラインか業務システムの中で眠ったまま」とみている。ここで日本IBMが強みとするWatsonを駆使し、データとAIの組み合わせによって新しい価値を生み出す仕組みを構築すれば、「案件規模も一気に大きくなる」と目論む。

 最初に立ち上げたVMwareリーグは、VMware上で動くクラウドマイグレーションの案件を中心に、安定したビジネスが期待できる。その次のソリューションリーグは品揃えを増やすという重要な役割を担う。このためソリューションズリーグは3リーグの中で最も多くのパートナーが参加。一方、データリーグは実際にデータを持っている、あるいはWatsonをはじめとするAIに精通したデータサイエンティストを揃えているパートナーに集ってもらうことで、データを軸にした独自のパートナーエコシステムを構築していく。

 三浦執行役員は、「三つのリーグを掛け合わせることで、他社にはない日本IBM独自のエコシステムを構築。19年のパートナービジネスの規模を前年比で倍増させる」と、高い目標を掲げる。
 

リーグで面的な広がりを推進
将来的なビジネスの伸び代を狙う

 日本IBMのパートナービジネスは、いくつかのパターンがある。一つはIBMが主力とするサーバー製品Power Systems(パワーシステムズ)の販売チャネルだ。同製品は、昨年から今年にかけて旧製品のサポート切れに伴う更改需要が発生。関連事業の売り上げが、国内で年率10%程度の勢いで伸びている。Power Systemsの主要ビジネスパートナーであるJBCCホールディングスも“特需”に支えられるかたちで、同事業セグメントの売り上げが伸長している。

 また、中小企業の会計データを金融機関にデジタルデータで提出するペーパーレス化のプロジェクトには、全国の地銀や会計ソフトメーカー、SIerなど52社が参加して昨年末から検討がスタート。ほかにも大手SIerと個別に協業するといった販売チャネルを持つ。

 だが、サーバー販売はどうしても更改時期の波があり、将来を見通しても少なくとも国内市場で大きく伸びることが見込みにくい。金融機関など特定業種に向けた販売チャネルや、大手SIerとの個別協業では面的な広がりに限界がある。そこで、パートナーリーグでは、IBMテクノロジーを広く行き渡らせることに主眼を置いた。クラウドやデータ活用、AI領域は将来的に伸び代も大きく、今後の成長に期待できると日本IBMではみている。