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第17回日中情報サービス産業懇談会、変わる日中情報サービスの関係

2019/12/05 09:00

週刊BCN 2019年12月02日vol.1803掲載

 中国のデジタルエコノミーは米国に次いで2番目の経済規模に成長している。米中のデジタルエコノミーを合算すると世界全体の実に4割を占める。一方、デジタルエコノミーの成長は中国沿岸部に偏る傾向が依然として強く、中国全国でバランスよく成長させていくにはまだ課題が残る。日本と中国の情報サービス業界団体が毎年開催している懇談会「第17回日中情報サービス産業懇談会」で、急成長する中国のデジタルエコノミーの実態と日中情報サービス業界の新しい関係について活発な意見交換が行われた。

「第17回日中情報サービス産業懇談会」の会場全景

「イノベーションの嵐のよう」

 中国は国の政策として「デジタルエコノミー」の発展戦略を推進中だ。日本のスマート社会を目指す「ソサエティ5.0」や、ドイツのスマートファクトリーのコンセプト「インダストリー4.0」に相当する。百度(バイドゥ)、アリババ、騰訊(テンセント)のいわゆる「BAT」やファーウェイなどの巨大企業の台頭、IT系スタートアップ企業によるイノベーション活動の活性化が中国のデジタルエコノミーを牽引する。

 情報サービス産業協会(JISA)と中国の情報サービス業界団体の中国軟件行業協会(CSIA)が、日本と中国で毎年交互に開催する「日中情報サービス産業懇談会」。今年は17回目にあたり、11月5日に都内ホテルで開催し、日中双方から120人を超える業界キーマンが一堂に会した。
 
JISA 岩本敏男副会長

 JISAを代表して懇談会に参加した岩本敏男副会長(NTTデータ相談役)は、「中国はまるでデジタルイノベーションの嵐のようだ」と、活発な技術開発には目を見張るものがあると指摘。CSIAの呂衛鋒副理事長(北京航空航天大学計算機学院院長)は「米国と中国を合わせたデジタルエコノミー市場は世界の4割を占める」と、中国市場が米国に次いで大きな規模になっていると話した。

地域の不均衡な発展が課題に

 中国デジタルエコノミーの発展は、通信ネットワークや電子機器、ソフトウェア開発といった関連産業の需要を押し上げている。例えば、通信ネットワーク関連では電気通信事業の2018年の売上総額が前年比137%増と大幅に伸び、モバイルネットワークの通信トラフィック量は189%増に達している。電子機器製造分野の成長率は13.1%増と、工業全体の平均値より6.9ポイント高い水準で推移。ソフトウェア開発の売上高も18年は前年比14.2%増と二桁成長が続いている。
 

 デジタルエコノミーはGDPの成長エンジンの一つ。中国GDPに占める割合は14年が26.1%だったが、18年では34.8%に拡大している。一方、国土の広い中国だけに「地域の不均衡な発展が課題になっている」(CSIAの呂副理事長)という。デジタルエコノミーの地域別規模を見ると、デジタル機器メーカーの集積する広東省が4兆元(60兆円)超、上海周辺の江蘇省/浙江省、および山東省が2~3兆元(30~45兆円)であるのに対して、内陸部は1兆元(15兆円)未満の省が比較的多い。

 見方を変えれば、中国内陸部はデジタルエコノミーの成長余地が大きいとも言える。内陸部においても、日本の情報サービス業界の知見を生かしたビジネスチャンスの可能性に期待したい。

日本での開催は07年以来12年ぶり

 日中情報サービス産業懇談会は11年11月から外交上の理由などにより交流が中断していたが、18年7月に7年ぶりに交流を再開。日本での開催は07年以来12年ぶりとなる。この間、日中の情報サービス・ソフトウェアビジネスは、中国でのオフショアソフト開発を軸としたビジネスから、中国国内市場やグローバル市場を念頭に置いた連携へと大きく変わってきている。
 
CSIA 呂 衛鋒副理事長

 懇談会ではJISAの岩本副会長、CSIAの呂副理事長に加えて、経済産業省の田辺雄史・情報産業課ソフトウェア・情報サービス戦略室長がDX推進について講演。日立製作所の堀水修・理事・フェローが製造業オープン連携フレームワークについて話した。

 中国側からは大手SIerの東軟(ニューソフト)グループの陳錫民・高級副総裁兼COOをはじめ、業務アプリケーション開発の用友ネットワーク科技の赤〓(こざとへん)偉明・副総裁、AIソフト開発のDATATANG(データタン)科技の斉紅威CEOが自社の取り組みや日本向けビジネスについて講演。昨年の開催地である山東省済南市の済南市商務局サービス貿易処の馮益貴処長を団長とする11人の済南訪問団も出席した。
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外部リンク

情報サービス産業協会(JISA)=https://www.jisa.or.jp/