日立製作所は6月29日、新会社「ハピネスプラネット」を7月20日に設立し、研究開発を進めてきた「幸福度計測技術」を正式に事業化すると発表した。集団の幸福度を可視化し、組織運営に役立てるシステムを法人向けに提供するほか、外部の企業と連携して幸福度を活用した新サービスの創出を目指す。新会社の社長には、日立で幸福度計測技術の開発を主導した矢野和男フェローが就任する。

矢野和男 フェロー

 矢野フェローは15年以上にわたり、幸福度を数値として計測する手法を研究してきた。その結果、人が無意識に行っている身体運動と、その人が属する集団の幸福度に相関があることが分かったという。新会社が提供するモバイルアプリ「Happiness Planet」は、スマートフォンやスマートウォッチを使ってユーザーの動きをセンシングし、組織の幸福度や信頼感を「ハピネス関係度」と呼ぶ指数で表示するほか、指数を高めるために推奨される行動を提案する機能などを搭載している。

 これまで日立グループ内外83社・延べ4300人がHappiness Planetの実証実験に参加しており、アプリを継続的に使用することで、従業員の自信や働きがいが向上する効果が確認されたほか、過去に日立グループ内で行った実験では、幸福感と業績や生産性に有意な相関があることも確認されているという。

 また、新型コロナウイルス感染症対策で在宅勤務やリモートワークが広がっているが、雑談のような、意識的・計画的ではないコミュニケーションの機会が失われることで、職場の「心理的安全性」が低下する可能性が指摘されている。Happiness Planetで幸福度を可視化することで、このような問題が起こっていないかを早期に発見できるほか、指数を上げるためにメンバー間でのコミュニケーションを促す表示などが行われることで、リモート環境でもチーム内の共感や信頼を高める効果が期待できるとしている。

 新会社は10人程度の規模でスタートし、日立本体の営業部隊と連携しながら、法人向けにアプリの提案を行う。また、矢野フェローは「幸せを生んでいるということが、あらゆる物事の尺度になるのではないか」と述べ、幸福度の数値化は組織運営以外にも有用との見方を示す。例として、地域の幸福度を不動産選びや自治体の政策決定の指標としたり、個人の幸福度を融資や保険契約の内容に反映させるといったアイデアを紹介しており、日立グループ外の企業とも協業しながら、幸福度を活用した新事業を模索していく。日立社内の新規事業部ではなく、あえて新会社の形態をとったのも、独立性をもって他社との協業をスピーディに進めるためだという。

 新会社発足時点では電通と大塚商会の2社がパートナーとして挙げられている。このうち大塚商会は幸福度計測技術に関して既に有償サービスを自社で導入しているといい、今後はハピネスプラネットとともに国内の中小企業を活性化する事業をつくっていくとしている。(日高 彰)