レッドハットは7月21日、国内のコンテナ市場のさらなる拡大を目的に、コンテナベースのシステム開発・運用のノウハウと経験をパートナーに伝授し、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速や課題解決の促進を狙う新しい支援策「OpenShift Partner Empowerment Project」を始動させた。今年度末までにエンジニア2000人の育成を目指す教育支援のほか、提案ノウハウの習得支援、コンサルティングサービスの三つを柱としており、支援策に賛同するパートナーからはコンテナ人材の裾野拡大に向けて期待の声が上がっている。(齋藤秀平)
コンテナはキャズムを超え普及期に
レッドハットではこれまで、コンテナプラットフォーム「OpenShift」に関するパートナー戦略を段階的に進めていた。第一弾はOpenShiftのマネージドサービスの展開を支援する「OpenShift Managed Practice Program」(2019年12月開始)で、第二弾はISV(独立系パッケージソフトベンダー)などのアプリケーション開発パートナーを対象に、Kubernetes Operatorの技術支援などをする「Kubernetes Operator Project」(20年12月開始)だった。第三弾となる今回は、ユーザー企業から情報システムの開発・運用を受託するSIerを支援するのが目的。
同社の金古毅・副社長執行役員パートナー・アライアンス営業統括本部長兼事業戦略室は「IT人材の70%がパートナーにいる日本では、パートナーと連携してDXを推進していくことが、多くのお客様にとっての近道になる」と語り、IT人材の多くがベンダー側に所属する日本市場の特性をより強く意識した支援策となる。
金古 毅 副社長
今回の第三弾は、第二弾から7カ月での発表となり、これまでより周期が短くなった。理由としては、金古副社長が「コンテナはキャズム(本格普及の前段階にある溝)を超えて普及期に入ったという状況になっている」と話すように、世界的にコンテナ市場が急成長していることがあるようだ。
調査会社IDCジャパンが4月に発表した「2021年 国内コンテナ/Kubernetesに関するユーザー導入調査結果」によると、国内では、調査対象とした国内420社のうち、本番環境でコンテナを使用している企業の割合は前年の調査から2.7ポイント上昇の16.9%、導入構築/テスト/検証段階の割合は同4.7ポイント上昇の23.3%となり、合わせて40.2%の企業がコンテナの導入を進めていることが明らかになった。
金古副社長は「高まる不確実性に向き合うためにはスピーディな対応が要求される。DXの成果はデリバリーパフォーマンスで決まる時代になったことが背景にある」と市場の動向を分析し、「コンテナは、そうしたリードタイムの短縮と変更頻度の向上、そして信頼性の向上を実現するメインストリームの技術要素として急速に浸透しつつある」と述べた。
パートナーとの相乗効果でDXを推進
支援策には19社が賛同
経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によると、国内では、2030年に最大で79万人のIT人材が不足すると予測されている。同社は、これをDXの阻害要因と捉えており、今回の支援策では、賛同パートナーを対象に教育を実施し、計2000人のOpenShift運用担当者や管理者、開発者を育成する考えだ。
このほか、OpenShift導入に向けて効果的なロードマップ案を策定するワークショップについて、従来は同社が顧客に直接提供していたが、今後はSIパートナーが顧客に提供できるように支援する。同社の有償コンサルティングサービスについても、パートナー経由で顧客への提供を開始。パートナーは、コンテナ導入のコンサルティングサービスを再販したり、自社のサービスに組み込んで提供したりできるようになる。
今後はパートナー戦略に賛同するパートナーの経営層との会合を半年に一回開催し、そこで得た意見を支援策の強化に反映させると説明。さらに、パートナー同士のジョイントソリューションによる連携を促したり、新たにOpenShiftに対応したISVを紹介する場を提供したりしていく。
今回の支援策には計19社が賛同し、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)とNEC、日本ヒューレット・パッカード(HPE)、ネットワンシステムズの4社が発表会に出席した。このうちCTCの田中匡憲・エンタープライズビジネス企画室室長は「コンテナの基本的なエンジニア育成については、質と量を業界全体で盛り上げていく必要がある」とし、NECの菅沼公夫・先端SI技術開発本部OSS推進センター本部長も「お客様のコンテナ技術に対する期待は非常に大きいことを肌で感じており、きちんと対応できるエンジニアを多く育成することが、今、われわれに求められている」と話した。
ネットワンシステムズの篠浦文彦・執行役員ビジネス開発本部長は「コンテナについては、この数年、エンジニアの育成や自社での活用、お客様への導入を進めてきた。体系的にエンジニアを育成するという意味で(今回の支援策は)非常に効率的だ」と評価し、HPEの酒井睦・Pointnext事業統括GreenLakeビジネス開発本部本部長は「コンテナは、日本のDXを支える技術の基盤になると思っている。レッドハットとともに、お客様のDXを深く、広く支えていきたい」とした。