新型コロナウイルスの流行による社会の変化で、さまざまな業界において従来は対面で行っていた取り引きが非対面で行うオンラインへと変化している。総務省の「我が国のインターネットトラヒックの集計・試算」をみても、コロナ禍によって急激にインターネットトラフィックが急増しており、オンライン化が進んでいることが分かる。この連載では、「オンライン化推進におけるSaaS活用のススメ」と題してSaaSのメリットを解説していく。
出典:総務省(R3.2.5)「我が国のインターネットトラヒックの集計・試算」
手続きのオンライン化を妨げるバックオフィスの複雑さ
医療業界のオンライン診療、不動産業界における重説・契約書の電子書面交付解禁など、従来法律上で認められていなかった取り引きも変化が進み、現在も続いている。外出制限などの影響で従来通りの対面営業が難しくなり、急務として非対面チャネルの追加を迫られた企業担当者も多いのではないだろうか。当社でも非対面での本人確認などのSaaSを提供しているが、昨年は上記のような背景からか急いでオンライン化をしたいといった相談が非常に多かったと実感している。
オンライン化というと、紙で提供するサービスの受け付けをインターネット上の入力フォームに変更するというのが代表的な例として考えられる。これは簡単に実現できそうにみえるが、実際に検討してみると受信したデータをどうやって処理していくかという部分で、受け入れ側のシステムの機能が不十分であることなどを理由に断念するケースも少なくないのだ。
例えば、データの受け入れ後、従来は紙ベースの台帳を受け渡すことで管理をしていたものが、紙ではなくなったため工程管理ができなくなってしまい、受付システム上に工程を管理する機能を追加しなければならないというケースが考えられる。それならば、受け入れ後の工程を変えず、受信したデータから帳票を作り、従来どおり紙ベースの台帳で工程を管理するという方法もあるが、費用対効果は小さくオンライン化のメリットを享受できなくなってしまう。
SaaSを利用したカンタンDX
そういった状況の中、非常に市場を伸ばしているサービスとしてクラウド型のCRMサービスがある。国内製品でサイボウズの「kintone」、海外製品で「Salesforce」などが広く知られており、汎用的な機能でさまざまなサービスに対応できるシステムとして多くの企業に利用されている。
こういったCRMサービスはすぐに導入でき、既に導入しているシステムへのデータ連携も比較的容易に実現できるという点も魅力となっている。
紙ベースの対面手続きイメージ
SaaSツールを活用したDXイメージ
低コストでスピーディーにオンラインサービスの提供を実現できるという点で、試行的にサービスを始めるような場合には大変都合が良く、万が一サービスを終了するような場合でもサービスを解約するだけで、システムを除却する必要ないという点も大きなメリットだ。
しかし、汎用性が高いCRMだからといって、単体で全ての機能が賄えるわけではない。会計、電子契約、本人確認など、専門性の高い業務については対応できないことがある。ただ、特殊な業務に関してもCRMと提携しているサードパーティ企業が専用機能の付加サービスをさまざま展開しており、それらを利用することで専門性の高い業務についても対応している。こういった点も、汎用的なCRMが多くの企業に選ばれている要因の一つといえそうだ。
新規でオンラインサービスを始めたい、従来対面で行っているサービスをオンライン化したいといった企業にとって、顧客基盤となりうる多機能なクラウド型CRMサービスをベースにして多様なSaaSを組み合わせれば、最小限のコストと最速のスピードで実現が可能になるかもしれない。
■執筆者プロフィール

中村浩一郎(ナカムラ コウイチロウ)
ショーケース 取締役
明治大学卒業後、西表島を放浪、後にIT系企業で大手電機メーカーのPCカスタマーセンターのBPOをマネージメント。その後、ネット銀行コンシューマーファイナンス企画推進部長を経て、2020年2月、ショーケースに入社。コンタクトセンターの立上げを多く経験し、そこから得たノウハウを結集したフロントUI/UXをSaaSとして提供するプラットフォーム「おもてなしSuite」プロジェクトの監修を行っている。